王子様など、必要ないのです
私には日本の足がありますし、それを踏みしめて、一人でどこまででだってあるいていけるのですから。私を迎えに来る王子様なんて言うものなど到底、必要なんてないのです。
「ですから、先輩」
私は別に格好が良かったり、常に私の傍にいて、私を守ってくれる王子様などという幻想よりも
「私を見てたまには嫌そうな顔をして」
「私よりも大事なものがあって」
「それに向かって一生懸命な先輩をこけようが、怪我をしようが、泥にまみれようが、この二本の足で必死に走って追いかけて」
たまに、振り向いて笑ってくださったらそれで十分満足なんです
「…それは」
それは、俺じゃないといけないもの、なのか
「……手嶋先輩は確かに素敵な方ですけれど、目の前のモノに一生懸命になりながらもこちらを振り向いて笑ってくださるとっても器用な方でしょう?」
わたし、はじめ先輩の不器用な必死さがいっとう好きなんです
「……変だ」
「重々承知しています」
でも、走り出してしまったものは仕方がありませんから
「明日も、追いかけていきますので」
戸惑った顔で、たまーに抱き留めていただけたりしてくださったら、私、とても幸せだわ