竜の幼姫の誕生日

4月19日。カンナが生まれた月と日にち。秘境にあった村で世話係とお友達がよくお祝いしてくれた。お父さんが一回だけカンナの誕生日おお祝いしにきてくれたことがあった。その日は、カンナも嬉しくてお父さんの抱きつき頭をなでなでして幸せな誕生日だった。今にして思うと世話係が気遣ってくれてお父さんに誕生日が近いと報せてくれたらしい。近いうちに秘境にでも寄ろうかな。その世話係の誕生日に間に合えばいいな。


透魔城の休憩室に誕生日の主役のカンナが一息入れていた。お父さんが透魔 の国王になったことでカンナも透魔の姫君になった。招待客に挨拶兼ねてのお礼を言ってまわった。お姫様になって誕生日にたくさんの人がお祝いしにきてくれたことが嬉しさ半分と辛さが半分カンナにあった。お父さんとずっといることが増えたこと。透魔王国が再建してから日が浅く招待客から見えない圧力がかかるからだ。


「カンナ見つけました。」

「ベロアにキヌ来てくれて嬉しいよ。」

「色々な匂いがしてカンナを捜すのが大変でしたが誕生日おめでとうございます。」

「カンナは、隠すことしなくていいね。」

「二人とも尻尾と耳を隠してるだよね。痒くない?」

「シャラが人間に見える薬くれたから楽だよ。」

「そうですね。痛くなるくらい隠さないでいいですが服が落ち着きません。」

赤ずきんを外しお団子に結い上げ花の髪飾りをつけ青いワンピースをきたベロア。ガジュアルから離れエレガントの格好が珍しい。

キヌの方は、フォレオのお手製のリボンをあしらったドレスを着ていた。可愛らしい格好も似合っていた。

「キヌ、ベロア私の誕生日に祝ってくれてありがとう。でもどうして私には、尻尾と獣耳が見えるだろう?」

「カンナは、竜に変身できるでしょ。人間の作った薬を飲んでもすぐに見破れます。」

「よく分からないや。」

「まぁカンナも一つ大人に近づいて大きくなったもん。竜ってことは、空を飛んだり火を吹くこともできるじゃない」

「それなら空は、自由に飛ぶこと目指したいな。」


「いたいた!おーいカンナ」

「シノノメ君ノックくらいしないか。」

「そうですよ。知らない人だったら失礼ですよ。」

「強い生命力の気配なら大丈夫だよ十中八九カンナがいるもの」

「キサラギノックは、してください。知らない人なら驚きます。」

キサラギがペロッと舌を出した。休憩室に両国王族の子息が入ってきた。カンナが目を光らせるとジークベルト胸の下に抱きついた。

「カンナ元気そうだよかったよ。誕生日おめでとう。」

ジークベルトがカンナの頭を撫でると嬉しそうに笑った。嬉しさのあまりカンナの頭の上に竜の角が生えた。角で手から血が出たものの即座に拭き取りカンナの頭を撫でた。もちろん「王子」スマイルで。

「おーいジークプレゼント渡すなら今だぞさっさと渡せー。」

ほのぼのした空気を破るシノノメの一声で頬を染めながら紙袋から長方形の箱を取り出した。

「カンナこれを君に気に入ってくれたらいいとおもって」

「なんだろう。わぁドレスと腕輪だー。」

桜色のピンクに腰と肩にレースをあしらったドレス。腕輪は、銀色で空色の宝石が散りばめら飾りにハートがあった。

「デートするときに着けたらカンナがさらに可愛くなって来てくれたらいいと思った。」

満開の桜の下でカンナが贈ったドレスと腕輪を身に付けてデートしたら花のように綺麗だろう。元気に手を引くカンナがひだまりのような笑顔をさえ向けてくれでば。

「ねぇジーク着替えてみてもいい?」

「あぁ。私にみせてくれるかい。」

「じゃお化粧してあげる。」

「キヌたのみますよ。」

キヌにしては、上手く化粧してくれて。婚約者から誕生日のドレスと腕輪をつけてお披露目すれば。

「カンナ似合ってるぜ」

「ジークベルト美的センスありますね。」

豪快なシノノメとフォレオから称賛を浴びてカンナは、嬉しくなった。

「ねぇジークお父さんに見せに行こうよ。」

「いいのかい。」

「うん。見せ終わったら私とデートしようよ。」

ジークベルトの手を引きカムイのもとへ向かった。

お父さんからパーティをお開きにしてもらい。ジークベルトと外へ出た。竜に変身するとジークベルトに背中に乗るようにすすめる。ジークは、躊躇いつつも竜の背中に乗ると上空を舞った。しばらくして満開のサクラに降り立つと変身を解きジークベルトの手を引いた。

「ジーク一時間だけ夜桜見ようよ。昼間と違う桜も綺麗だよ。」

カンナの微笑みにジークベルトは、頷いだ。見慣れた暗い夜。桜の風景。爛々と輝く瞳で誕生日を迎えたカンナ。その光景を目に焼きつけ絵に描こうジークベルトは、決心した。

終わり。
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ちょこんと短編

これは、「暗夜の皇太子殿下と竜神の嫁」の前日談です。

ジークベルトside

父上に連れられて新・透魔王国国王カムイ様の謁見するため馬車で向かっていた。

白夜王リョウマから譲り受けられた土地の風景は、綺麗だった。緑豊かで野菊が咲いていた自然が多かった。

「嬉しそうだなジークベルト」

「えぇ。一年ぶりにカンナに会えるから」

「謁見が終わればしばらくはカンナに会えなくなるぞ。」

「えぇ。わかっております。ですが暗夜も色々変わる時がこの時期。来る者を拒まない争いで解決せず国民が笑って暮らせる暗夜王国にしたい。」

「お前も私の跡を継ぐ暗夜王だ。私は、父上が撒き散らした混乱を。争いで亡くなった者を慰霊しながら訪問しよう。」

祖父の話を出すときの父上の顔が悲しいような寂しいような顔をした。

祖父・先代のガロン王は、突然行方をくらました。遠征中でガロン王の衣服だけがあり遺体が未だに見つかっていない。というのは、表向きの話で元凶であったハイドラに見限られて生け贄となったのを白夜と暗夜連合軍で目の当たりにした。


もしも気難しくも勇敢でカリスマ性のある父上の慕うガロン王と孫の自分を入れてどんなことをして過ごしたのだろう。悪逆非道な先代の祖父の人柄を確かめる術もないジークベルトは、あれこれ思うのをやめた。


「父上」

「なんだ。」

「お祖父様のことを聞かせてくれますか。」

「聞こうとしない話を振るとは。ほとんど聞いたことと変わらないぞ。」

「いいえ。もう私は、秘境の世話係の話を鵜呑みにした小さな子供でなくなりました。父上から憧れの先代の暗夜の王の話を次期暗夜王へお聞かせください。」

父から聞いたガロンは、ほとんど変わらない内容だった。ただ王城で過ごしたことがないジークベルトは、話のなかで祖父の意外な一面が聞けた。

若いころのガロン王は、その勇敢でカリスマ性から何人の貴族の子女は、虜となり妻になろうと色仕掛けしたり。子供を儲けてガロン王の権力に繋げようとしたりしたそうだ。

妻となったのは、ガロン王と相思相愛のエスカテリーナが妃となった。そうして待望の長男マークスが生を受けた。

「父と母の夫婦の仲は、私の理想で幸運な子供時代であった。反面エスカテリーナの派閥であった貴族がふんぞり返ったことで妾同士の内乱がひどかった。本妻の子供でも威厳と力がないことをいいことに妾の子供同様に貶されることも少なくなかった。」

腐敗の血肉争いと言えばいいのか。

「母が亡くなったとき私も父も嘆いた。母の墓前で強い王族になると誓い苦手な勉学と剣術と色々な分野を克服しよう結果出してきた。」

そのせいか皺が増えたり記憶力が助かりと気遣いが周囲が引くほどのレベルになった。

「神器を除きサークレットは、父上から賜ったものだ。」

「ジークフリードは、お祖父様から譲られたのでは、ないのですか。」

「譲られたものとは、違う。」

「?」

馬車が止まりカムイの居城に着いたことを知らせてくれた。

正門に着くと横から走ってくる音が聞こえた。どんどん音が大きくなりジークベルトに突進してきた。

「ジーク久しぶり!!マークス義父さんようこそ新・透魔王国へお越しになられました。」

白いフリフリをあしらった水色のワンピースを基調に。背中までウェーブのかかった髪をおろしたカンナがジークベルトに抱きつき熱烈に歓迎してくれた。

続くかも。





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