時事ヘタ
【悪の帝国ロシア包囲網A】/ 光と闇の攻防
2022/03/30 10:35
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◆様々な文献やニュースなどを参考に、執筆者の考えで纏めたものです。

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2022年3月21日 ちはや拝



[newpage]



【悪の帝国ロシア包囲網A】




■「国際社会連帯のメッセージ」バイデン大統領から謝意 日本のロシア金融制裁・輸出管理措置に:FNNプライムオンライン
www.fnn.jp

2022年3月2日
アメリカのバイデン大統領から岸田首相に対し、ウクライナ情勢をめぐるロシアへの金融制裁など日本政府の対応について、謝意を示す書簡が届いていたことがわかった。

政府関係者によると、書簡は先月28日付で、「ロシアによるウクライナ侵略への対応における首相のリーダーシップに特に感謝している。日本の強力な対応は、理不尽で不当な攻撃に対し国際社会が連帯して立ち向かうというメッセージとなった」と指摘。
その上で「厳しい金融制裁」や「輸出管理措置」での連携についても謝意を表明し、「重要な決断を下した首相のリーダーシップを称賛する」と記した。

そして、「今後数か月のうちに日本でお会いし、極めて重要な日米同盟を前進させるため、引き続き共に取り組むことを楽しみにいる」と結んでいる。
(以下略)





■米大使「ロシア戦力の中枢に打撃」 日本の追加制裁
www.sankei.com

2022/03/19(土)
米国のエマニュエル駐日大使は18日、日本が新たにロシア政府幹部ら15人と9団体の資産凍結を発表したことを受けて声明を発表し、「国防省や諜報機関の幹部に加え、国営武器輸出企業も対象とすることで、ロシアの戦力の中枢に打撃を与えるものだ」と強調した。
エマニュエル氏は、ロシアのウクライナ侵攻について「丸腰の市民、女性、子供を含むウクライナ国民への非合法な攻撃」と厳しく非難。「岸田文雄首相と日本政府が講じた最新の制裁措置を歓迎する」と述べた。
日本の制裁対象となった「個人と団体は200を超えた」と指摘し、プーチン露大統領の「圧政に抵抗していることを明確に示すものだ」と評価した。







ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー




【欧米&日本サイド】




アメリカ合衆国ニューヨーク州マンハッタン島にある国際連合本部。
ロシアのウクライナ侵攻事態を受けて連日ロシア制裁およびウクライナ支援に関する会議が開かれていた。

アメリカ合衆国の呼びかけに呼応した国々が集まり、ほぼ缶詰状態で国連総会、安全保障会議、国連部会会合、各国との個別会合など、分刻みのスケジュールに追われていた。




日:アメリカ合衆国!


会議の合間の短い休憩時間、ラウンジの中央に陣取ってハンバーガーに噛り付いていたアメリカの元に、珍しく顔に怒りを滲ませた日本が足早にやって来た。


米:やあ、日本、もぐもぐ…

日:どういうおつもりですか、これは!


周囲を憚ることもなく日本はアメリカに何かの書類を突きつけた!
それを受け取ってアメリカは目を走らせる。


米:うちのバイデン大統領の日本政府への感謝の手紙と、エマニエル駐日大使の日本政府への高い評価だね、これがどうかしたのかい?

日:どうかしたのかじゃありませんよ、『またか』と思いましたよ!
捕鯨問題やChinese Virusダイヤモンド・プリンセス号隔離問題の時のように我が国をスケープゴートにするつもりなのではありませんか!



【スケープゴート】
ある集団に属する人がその集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者に仕立てあげて攻撃する現象を指す。
少数民族の迫害(ホロコーストなど)はこの一例であるし、より卑近な例を挙げると、学級におけるいじめや家庭における虐待も同様であろう。



米:言っている意味がわからないんだぞ、スケープゴートってなんだい?


アメリカは心底不思議そうに日本を見返した。
日本は眉間に皺を寄せ、真顔でアメリカを睨んでいた。


こういう表情の日本は危ない!
脳内にイエローアラートが点滅する。

軍事同盟国として長い付き合いである、瞬時に危機を悟ったアメリカは、慎重に言葉を選んだ。
言葉を間違えれば日本は一瞬にして爆発する!

ウクライナに味方し、ロシアを敵に回して対峙しているこの大事な局面に、日本を怒らせるのは不味い。
日本には何としてもロシア制裁に率先してもらわなくてはならないのだから。


米:え、えっと、気に障ったのならごめんなんだぞ…
ただ、こういう時って、日本はいつも慎重で、なかなか決断してくれないし…、憲法9条がどうとかでいつも及び腰だろ?
でも、今度の…、ウクライナ侵攻に対するロシア制裁には率先してくれて、岸田首相にも日本政府にもとっても感謝しているんだぞ。

日:……

米:実際、日本はアジアの雄だし、日本が俺たちを支持してロシア制裁に率先してくれるなら、日和って決めかねている国々も日本に倣うだろう。
国連総会決議の時はだいたいそうだろ、どうでもいい案件とか、関心のない案件とか、日本がどれを選ぶか、或いは賛成か反対かを見て決める国って多いじゃないか。
日本はどんなに小さな案件でもきっちり調べて総会に臨むから、日本の判断なら間違いないだろうと日本が投票した方に投票する国が少なくないのは君も知っているだろう。


だから…、そう続けようとしたアメリカを日本が遮った。


日:お為ごかしは飽き飽きです!



【御為ごかし(おためごかし)】
表面は人のためにするように見せかけて、実は自分の利益を図ること。じょうずごかし。



日:私の頭の中の警報が鳴り響いているのです。
あなた方欧米がこういうとこを言い出す時は要警戒だと。

米:俺たちが何か企んでいるって言うのかい?
何故そうなるんだい、感謝の意を示しただけじゃないか、日本を高く評価したらダメなのかい?


アメリカを睨む日本の表情は変わらない。


日:あの時、ダイヤモンド・プリンセス号(DP号)の隔離政策に、あなた方欧米は政府もメディアも挙って日本非難を始めました、挙ってです!

米:。。……

日:もしも、DP号の防疫に失敗し日本国内にChinese Virusが蔓延していたら、あなた方はChina武漢ではなく、我が日本をChinese Virusの蔓延国として大々的に非難していたことでしょう。
欧米で既にChinese Virusが蔓延していたのを隠し、日本での防疫失敗の朗報を待っていた。
そして、その朗報を受けて、欧米各国がChinese Virusの蔓延を明らかにして、大々的に日本非難の合唱を開始するはずだった…、そうですよね?
我が国は外圧に弱く、文句を言えばお金が出て来ますからね。
幾ら毟り取れるか、さぞ楽しみだったことでしょうね?

米:何を馬鹿なことを言っているんだい!?
隠した、だって!? 一体何人死んだと思っているんだい!?


日本の余りな言いように、アメリカもさすがに気色ばんだ。


日:2022年3月19日現在、累計死者数606万人、累計感染者数4億6410万9092人。
アメリカ合衆国の累計死者数97万人、日本27000人…(AFPより)

米:そうだよ、死者100万人だよ! それなのに隠しただって!?

日:CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のファウチ博士がChinese Virusの発生を隠蔽した結果です!
自業自得、因果応報というものですよ!
トランプ大統領の治世でなければ、アメリカ合衆国の犠牲者はもっと増えていたことでしょう。
『人を呪わば穴二つ』…、悪いことはできないものですね。




【人を呪わば穴二つ】
・人を呪うと、呪った相手と自分のために二つの墓穴が必要となる。
人を陥れようとすると、自分もまた同じ目に遭うというたとえ。
・人を害すると、密かにやったつもりであっても、同じ仕打ちにあうことを覚悟すべきであるという事。転じて、安易に他人を害しようとすることを戒める。



何処か勝ち誇ったような日本の表情に、アメリカは眉をひそめた。
内心では怒りがふつふつと湧いてくるのをなんとか押し留めていた。



米:それで、Chinese Virus戦争に勝利した君は、負けた俺に何が言いたいんだい?

日:同じだと言っているのです、DP号の件と今度のロシア制裁の件が!

米:同じ? また隠しているって!?

日:我が国をスケープゴートにして企んでいるということですよ!

米:ちょっと待ってくれよ、どうやって日本をスケープゴートにできるって言うんだい?
ロシアのウクライナ侵攻は、どう考えだってロシアが悪いって決まり切ったことじゃないか。

日:我が国からお金を引き出すためですよ。
アメリカ合衆国の10年もの国債の利払い年でしたよね2021年は。
10年毎のデフォルト危機の年に世界で何があったか覚えていますよね?

米:さあ、なんだったかな?


アメリカが剣呑な雰囲気を纏わせた。


日本:おやおや、まさかお忘れになったとか?
では、教えて差し上げましょう。




2001年9月11日・21時46分 アメリカ同時多発テロ → アフガニスタン戦争 → イラク戦争
2011年3月11日・14時46分18秒 東日本大震災・対アメリカドル円相場高騰76円
2022年2月24日 ロシアVSウクライナ戦争




日:ロシアのウクライナ侵攻は2022年ですが、2021年度中に何処でもいいから戦争を起こしたかったのですよね?
中東かイランか、ウクライナかChinaか、インドか…
メディアを使って散々煽ったのに、何処も小競り合い程度で火種を燃え上がらせることはなかった。
メインターゲットだったChinaは、北京オリンピックを控えて当面動くことはない。
メインターゲットがChinaだったのは、我が国に続いてアメリカ国債を大量に保有している国だからですね。
利払いは如何程か個人的には興味がありますよ、アメリカさん?

米:……

日:ターゲットを『悪の帝国』ロシアに変えて、昨年からウクライナ危機を煽り、ロシアが侵攻するとメディアは散々に書き立てたがロシアは動かなかった。
聞いた話では、Chinaが北京オリンピックが終わるまで動かないで欲しいとロシアに頼んでいたとか?
律儀ですよね、ロシアも、北京オリンピックが終わるまでウクライナ侵攻を待っていたのですから。
思うように事が運ばず焦っていたアメリカに手を差し伸べたのはイスラエルですか?

米:ハアー…、妄言はそこまでにしてくれるかい?
君の根拠のない妄言なんて誰が信じるんだい?

日:おや、あなたが言ったんじゃないですか、つい先ほど。
我が国の選択を日和見の国々は支持するのでしょう?
しかも、我が国は些細な案件もきちんと下調べして来ると!
日本国の私が言っていることに根拠がないと何故言い切れるのですか?

米:なら示してくれよ、その根拠とやらを?

日:では、3.11の話をしましょうか?
日本時間2011年3月11日、14時46分、三陸沖を震源とするM9.0の未曾有の大津波地震が日本を襲い、第一福島原発事故が引き起こされた。
欧米メディアは日本国壊滅と散々に書き立て、大使館員や駐在員を引き揚げた国もある中、何故か対米ドル円相場が76円代に急騰。
この時の日本政府、民主党政権は為替介入を行わず放置、どれほどの人が首を括ったことか…

米:……

日:その後、日本政府はアメリカ国債を大量に購入、前年度比12兆円の買い増しですよ。
広域の大津波被害と第一福島原発事故を抱えた日本が、これだけの米国債買い増しを行えたのは、偏に対米ドル円相場の高騰があったからです。
事件が起こって犯人探しをする時のセオリーは、『得をするのは誰か?』ですよね?
アメリカさん、3.11で得をしたのは誰ですか?

米:アメリカ…、だと言わせたいのかい?
俺たちG7は協調介入を行なって日本を助けたのを忘れたのかい?

日:ええ、当時は感謝しましたよ、あの様な時にまで悪意で以って陥れようとする国があるなんて思っていませんでしたから!
私、あなたに言いましたよね、3.11は人工地震だという噂があると?
あなたは笑い飛ばして誤魔化そうとしましたが、私はその疑いを忘れたことはありません。
3.11の犠牲者の数は、公には死者・行方不明者合わせて18,425名とされています。
しかし、実際の被害者数はこの10倍、10万人以上!


日本はきっと唇を噛み、アメリカ合衆国を睨んだ。


日:アメリカ合衆国、楽しいですか、他国やその国民の命を弄ぶのは!?
そうやって他国を陥れ、金や財産を奪って築き上げたアメリカ合衆国が、歴史に刻んだものは何ですか!?
戦争と差別と黒人奴隷、それだけじゃないですか!
実に…、実に、誇るべき歴史ですよね?


アメリカはおもむろに立ち上がると、日本の胸倉を掴んだ。


米:日本、大人しく聞いてやっていれば、なんだい、君は!
さっきから訳の分からない悪口雑言ばかり!
いい加減にしてくれよ、俺は君の妄言に付き合っている暇はないんだよ!

日:妄言妄言と五月蝿いわ、小僧!


日本はアメリカの手を容易く払いのけると、胸倉を掴み返しアメリカの大きな体を椅子へと押し付けた。
そして片膝をアメリカの腹部に当てがい抑え込んだ。


日:何が感謝の手紙だ、笑わせるな!
散々ロシアを煽っておきながら、ロシア軍がウクライナに侵攻した途端にウクライナから逃げ出したのは何処のどいつだ!
いの一番に逃げ出したのはお前だろうが、アメリカ合衆国!
イギリス軍も巻き込んでウクライナの駐留軍を引き揚げさせ、ウクライナを孤立無援に追い込んだのはお前だろう!
ウクライナ大統領ゼレンスキーが何処にいるか言ってやろうか!
ポーランドのアメリカ合衆国大使館に亡命中だ!
アメリカ、カナダ、ドイツ、スイスの国会演説を、ゼレンスキーは何処から演っているんだ!
「私はウクライナにいる」笑わせるな、何もかも嘘ばかりじゃないか!
真実なんて何処にある、言ってみろ!



人前で事を荒立てることのない日本が、公の場でアメリカ合衆国を抑えつけ怒声を浴びせている。
その光景を目撃した国々は、80年前の光景がフラッシュバックしたかのように見えた。
誰も止めに入れず、誰も近づけず…


英:何やっているんだ、彼奴ら!

台:日本さん!?


イギリスが二人の元に慌てて駆け寄り、台湾が後を追う。


日:ゼレンスキーは日本にも国会演説を申し込んで来た。
岸田首相は断ったが、その後お前たちは何をした!
3月16日、東日本で震度6強の地震を起こした、人工地震だ!
津波の恐怖醒めやらぬ日本国民を再びの恐怖に陥れたんだ!
いつでも人工地震は起こせる、3.11のあの恐怖を味わいたくなければ、ゼレンスキーの国会演説を歓迎しろと脅したんだ!
違うとは言わせんぞ、アメリカ合衆国!


睨み合う日本とアメリカ…
イギリスが近づいて来て…


英:おい二人とも止めろ、ここを何処だと思っている!


イギリスに一瞥もくれることなく日本は続けた。


日:お前とイギリスは、ゼレンスキーの国会演説を日本が受け入れていたら、日本の国会議員たちがスタンディングオベーションで拍手している場面をメディアで流す用意をしていたそうだな。
日韓慰安婦問題合意の時と全く同じ構図だな。
欧米政府とメディアが一斉に歓迎し、日韓慰安婦合意を確定させたあの時と。
そして、今度は、アメリカ主導のロシア制裁を、我が国が主導したかのように摩り替えようとしている。
何処まで卑劣なんだ、お前らは!


英:二人とも落ち着け! 日本、手を離せ!


イギリスが二人を引き離そうと日本の背後から組み付いた。
小柄なはずの日本だったがびくともしない…


日:台湾、イギリスを抑えなさい!

台:あ、はい! イギリスさん、ごめんなさい!


台湾はイギリスの利き腕を掴むと腰を入れて軽く投げた。
あっ!と思うまもなくイギリスは台湾に組み敷かれていた。
それを確認してから日本はアメリカの腹から膝を下ろして解放すると、イギリスを無感情に見下ろした。


日:我が国を懐柔したかと思うと恐怖で脅しを掛ける。
今度は何を企んでいる、アングロサクソン!


英:……
米:……


日:お前たちの穢れた策謀に我が国を巻き込み、我が民の血と財産と国土を奪うつもりか!
『ジョセフ・ナイ』のシナリオ通りにはさせない、絶対に!
覚えておくがいい、アングロサクソン、私が国が逝く時は、お前たちも道連れだと言うことを!










***************






台:格好良かったよ、日本さん。
私もイギリスさんを投げられて気持ち良かったー


台湾が明るく語る。


あの後、騒ぎを聞きつけて日台米英の秘書官や事務官たちが駆けつけて来た。
それぞれ会議だ会合だと引き離され、日本は台湾を伴って庭に足を向けた。


日:台湾、アメリカを信じてはなりませんよ。


暫しの沈黙の後、台湾は頷いた。


台:わかっているよ、日本さん、ウクライナのことで身に染みたよ。
アメリカは台湾を利用するだけ利用して、最後には見捨てるって確信したよ。

日:ええ、聡明な台湾、我が国も信じてはならないとわかっていますね。

台:…うん、残念だけど、独りで戦うしかないって、わかっているよ。
これまでも独りで戦って来たから慣れてるよ。

日:赦してください台湾、力になりたくても適わないことばかりで…
でも、誤解して欲しくないのです。
平時でも戦時でも、我が民の心は貴女と共にあります。
でも、心だけではどうにもならないことがあるのです。
それが国と言うものなのです。

台:うん、わかってる、逆の立場でも同じだもん。
でも、台湾と日本の絆は常(とこしえ)だよね?




台湾が照れたように空を見上げる。
日本も釣られて空を見上げた。



アメリカ合衆国の瞳の色を思わせる青空に、筋雲が縦横に走っていた。



日本は眉を顰めると、台湾の手を引いて踵を返した。
アメリカも同じなのだと日本は自覚する。
そして…



手の中の小さな温もりを握りしめ日本は応えた。


日:台湾、お互いが望む限り、永久(とこしえ)に…







ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー

【ロシアサイド@】




帝政ロシアの遺産である冬宮の絢爛豪華なる一室に腰を落ち着けると、プロイセンは部屋をぐるりと見回してぼやいた。




普:相変わらず派手派手しい宮殿だなぁ、きんきらきんで目が痛いぜ。

露:まあね、ロシア王室は欧州一のお金持ちだった時代もあったし、芸術家のパトロンでもあったからね。
宮殿なんて国家の威信の産物でもあるから何処でもこんなものじゃないのかなぁ?
寧ろ、プロイセン王国の方が質素過ぎたんじゃないの?

普:実用性を優先しだだけのことだ、金なんてものは国家国民の為に使うものだぜ。

露:それはそうなんだけどね…
あ…、藪蛇だったかな、ベルリン宮殿を解体しちゃったのはロシア…、じゃない、ソ連だから申し訳なかったね…

普:空襲で被害甚大だったから仕方ねえよ。
俺様の優秀な弟が、ベルリン宮殿を再建してくれたからそれで十分だぜ、と言うか再建の必要もなかったんだけどな。
東西統一後で、金が幾らあっても足りなかっただろうにな…



しんみりした空気が漂う中、扉をノックする音がしてベラルーシが大きな荷物を抱えて入って来た。
それを無言でプロイセンに差し出すと、ロシアの傍に寄った。



辺:兄さん、核部隊の配置図です。

露:あ、ありがとう、ベラルーシ。


ベラルーシは書類をロシアに手渡すと、雪原の時とは打って変わってプロイセンを気にすることなく踵を返した。
その後ろ姿がなんとなくご機嫌な感じがしないでもない…?

首を傾げつつロシアは書類に目を走らせた。
そのロシアの手元を伺いつつプロイセンはベラルーシから受け取った荷物をテーブルに乗せた。


露:え、風呂敷? 日本君から?

普:おう、風呂敷は日本から貰ったものだぜ、中身は違うけどな。
風呂敷って便利だよな、小さく畳んで持ち運べて色々な用途があるし…


プロイセンが蘊蓄を垂れながら風呂敷を解いて行くと、何処か見覚えのある鍋が出て来た。
鍋の蓋を開けると、濃い赤…


露:あっ、ボルシチだ!
えっ、もしかして、ウクライナ姉さんに会って来たの!?

普:おう、そうだぜ、ロシアちゃんと食べてって預かって来たんだぜ。
これをお前に届けようと思って冬宮を訪ねたら、ベラルーシに捕まっちまったんだよなー
俺様良いことしたのに、なんでいきなり縛り上げるんだよ!

露:ベラがごめんねー

普:あの女の暴力暴言は今更だが、ウクライナ姉ちゃんからの届け物って言ってんのに、なんで話を聞かねぇんだよ!

露:うん、本当にごめんねー

普:まあ、ウクライナの作るボルシチは美味えから、それで勘弁してやるよ、今夜の夕食にしてもらえるか?

露:勿論だよ、今夜はご馳走だね。


ロシアは嬉しそうにボルシチの鍋を受け取った。
(そっかぁ、ベラルーシは姉さんのボルシチだって気づいていたんだね)
ベラルーシのご機嫌な理由に思い至ってロシアは一層笑みを深くした。


露:それで、姉さんは元気にしていた?

普:おう、相変わらずボイーンドイーンだぜ。
お前たちに会えないのを寂しがっていたけどな。

露:僕も姉さんに会いたいよ、なんでこんなことになっちゃったのかな…?

普:その台詞、さっきも聞いたぜ。

露:うん、無意識に口に出ちゃうみたい…


ロシアは核部隊配置図をテーブルに投げ出しサイドテーブルの茶器セットを手元に引き寄せた。


普:プーチン大統領が正義だとは言わねぇが、ロシアの国益を第一に考えていることは間違いねぇ。
私益しか考えねぇ連中、私益の為には平気で国家国民を裏切るような指導者ばかりの世界で、プーチン大統領のように命懸けで信念を貫き通す指導者は稀有だろうぜ。

露:そっかぁ、僕って案外幸せ者なんだね。

普:ああ、贅沢なくらいだぜ。
ドイツはメルケル婆さんの長期政権の所為で、国内は無茶苦茶だ。
ドイツ国民の為のドイツではなく、難民の為のドイツになってしまっている。
難民が犯罪を犯しても警察は動こうとしないし、時には被害者の方が逮捕される始末だ。
正当性のある法律が作られ、正しく運用されてこそ正義が為されるというのに、行き当たりばったりのパフォーマンスで作られた法律なんて害になるだけだ。
なんでここまで腐っちまったのかなぁって、議員連中を見ていて溜め息ばかりだぜ…


ロシアが紅茶を入れると、プロイセンは思い出したように背嚢を開いた。
そして、ブルーベリーとラズベリーのジャムを取り出した。


普:ロシアへの土産な。

露:あ、ありがとう!

普:メイプルシロップも持って来たんだが、ベラルーシにやった。

露:うん、機嫌良かったものね。

普:カナダからお前にと預かって来たんだと言って渡したんだが不味かったか?

露:えー、それは…、僕は良いけどカナダ君が気の毒かも?

普:ステルス機能搭載のカナダなら早々見つけられねぇだろ?

露:そもそもカナダ君からなんて言う必要あったの?



ジャムを舐めつつ紅茶を楽しみ軽口を交わし合う。

ソ連時代は自由がなく何処に行っても監視だらけだったが、バルト三国や東欧、中央アジアの国々と一緒に賑やかな時間を過ごしたものだっだなと懐かしさを覚える。

ベルリンの壁が崩壊し、なし崩しにソ連邦構成国が独立を果たし、そしてソビエト連邦社会主義共和国は崩壊した。
あれから30年が過ぎた…

その間も絶え間なく戦争は続いた。
戦争を煽り仕掛ける奴らの顔触れは常に同じだ。


『アングロサクソン』





普:ほんと、彼奴らどうしょうもねぇな。

露:えっ、何か言った?


無意識に言葉に出たらしい、ロシアが首を傾げていた。


普:いや、アングロサクソン兄弟がちょっとな。

露:あ、彼らのことなら、面白い情報があるよ。


ロシアは書類の中から一枚の紙を取り出した。


露:アメリカ君と日本君が国連本部で大喧嘩したんだって。


楽しそうにロシアは報告する。
プロイセンは書類を受け取って目を通した。


普:ふーん、日本が…、珍しいな?
肝心の喧嘩の原因が書かれてねぇのな、こんなお粗末な報告書、ドイツじゃ有り得ねぇ。

露:ロシアでも有り得ないよ、多分、本当にわからなかったんだと思うよ。
でも、あの日本君が、アメリカ君と大喧嘩したなんて面白い情報を報告しない方が有り得ないよね?

普:だな。


プロイセンはロシアに紅茶のお代わりを所望すると、日本の最近の出来事に想いを馳せた。


普:3月16日に東日本で大きな地震が起こったところだったよな?
選りに選って微妙な時期に震度6強クラスの地震か…
福島や女川原発は問題なかったんだよな、ロシア?

露:偵察機を出して放射能の測定をさせているけど数値に大きな変化はなかったそうだよ。
でも、さすがに地震大国と言うか、日本の建物は強靭だね。
僕のところもだけど、他の国だったら大災害で今頃パニックになっているよ。

普:だったら尚更におかしくねぇか?
被災地はともかく東京の大停電だが、何か情報はねぇのか?

露:ちょっと待って。


ロシアは茶器セットを片付けると書類をテーブルの上に広げた。


普:おい、ロシア、俺様がいるのに何やってんだ、お前?

露:大丈夫だよ、プロイセン君に見られて困るものはないもの。

普:核部隊の配置図があっただろ?

露:プロイセン君、ロシアと戦争するの?

普:しねぇ。

露:なら、何も問題ないよね。

普:。。…








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