【Short×3 Story】†追い掛けて(怪盗三世)
12/04/29 19:45 Sun
うっすらと開けられた扉の向こうから、女の名を呼ぶ情けない男の声が聞こえる。テーブルを挟みソファーに座していた二人から諦めたような吐息が漏れた。
窓の開く音。吹き込む風。遠ざかるバイクのエンジン音。
部屋から見えるのは陽の暮れかけた道に靡く髪。
「またか」
「らしいな」
それだけで通じてしまう幾度も繰り返された光景。
「よくもまあ、毎度違う手が思い付くもんだ」
「相手がヤツだからで御座ろう」
「IQ300ってか?」
くつくつと黒いジャケットの肩が揺れた。そうして、もう興味も無いとばかりにソファーに身を横たえる。
IQ300。それが如何程のモノか、本人以外は知り得ないのだ。
或は、いつでもこちらの手は知られているのかも知れず、それでも追い縋る彼女に彼らは僅かな称賛を贈る。ほんの僅かな。
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