明るい歌が少しずつ遠くなって、やがて静寂が訪れた。
冬のきんと冷えた空気を切って、空高く飛ぶ。

正しいかどうかは、分からない。
きみの味方でいたいから、きみの行為ごと肯定した。
それで良かったと、思ってはいるけれど。

やがて重力もなくなれば、際限なくどこまでも行けるのだと言う。
どこへでも行けるのなら、どこまで行こうか。
どこで終わりにしたい?


生きていてほしい、という言葉は、大抵の場合、暴力になるよ。

少しずつ、もらったものは返さなきゃね。
体についた金の箔を一枚ずつ剥がして、貧しい誰かに配って回る。

きみは世界の優しさを信じて、そのために全てを捧げたのだから、
世界の方も少しは価値があってほしいよな。

誰にも知られない方がいいと言うならせめて、
どの星になるのかは、自分で選んでごらんよ。

例えば、
一年中位置がずれなくて、広い海の上でも迷わない目印になる星がいいとか、
太陽が傾いて空のオレンジが紫に移るとき、一番最初に見える星がいいとか。

願いごとが具体的であればあるほど、
創られる世界は豊かになるよ。


ただの無知を、純粋だと思って。
従順であることを、美徳だと思って。
物語みたいって笑って、
自分の弱さに甘えたんだね。

許すことが、受け入れることではなく、諦めの先にあると気付いたとき、
ずっと歩き続けていた足を止めた。

目を閉じて、三秒。
もう一度開けてみると、暗闇に目が慣れて、先ほどは見えなかった星が見える。

例えばそう、
幸せとは、いつも静かな孤独の中にあったね。

星と星を繋いで、微かな灯りをつたえば、次々と思い出す。
すぐに忘れてしまうような日々の中に、本物の幸せがあったね。
輪郭が光に溶け込んで、そのまま、分からなくなって。


優しいきみのことは、最後まで、優しい記憶でいてほしいから
これ以上何も語ることはないのさ。

曇りない空の、夕方に沁み渡るオレンジ。
まだ固いままの桜の蕾が、しんと冬に耐えている。



蕾/無知/オレンジ