「おとーたん、おかーたん、いってきまーす」

「気をつけて行くのよー、アホ坊主たちと仲良くねー」

「あいあーい」

ちーちゃい手をひらひら振って家を出て行ったのは、ピカピカの一年生・永実。

外では、松本家の息子とポートガス家の息子が永実姫のお出ましを待っている。

「行ったかよい?」

「うん。ほら、マルコさんも早く仕度しないと遅刻するよ?」

「あぁ…よい…」

初香はこの後、洗濯と掃除したらくぅちゃんと来希と一緒に授業参観に行くんだもん。

初めての授業参観だもんね、ドキドキするよ。

2人が同い年のこども生んでくれてよかった。



なんだか様子のおかしいマルコさんを送り出して、家事を済ませて自分の準備をした。





*****


「ちょ、ほんとドキドキするーどうしよう…」

「落ち着きなよ、初香ちゃん」

「そうだよ、姉ちゃんがドキドキしてもしょうがないでしょ」

「なんで2人ともそんな落ち着いてんの?」

チビたちがいつも通ってる通学路を歩く。

くぅちゃんとこの子はしっかり者なのよね、そりゃ授業参観くらい余裕でしょうよ。

来希んとこはエースに似ておバカなのに、なんでそんな余裕なの?

「だって、今更焦ってもあのバカ聞かないもん、開き直るしかないよ。あはは」

妹よ…図太く成長したな…。

永実が1番普通なハズなんだけどな…マルコさん譲りの金髪と初香譲りのワガママさえなければ。

なんであんな“お姫さま”になっちゃったのか…甘やかすマルコさんとオヤジ様が悪いよなー。

なにげにイゾウさんまで甘やかすし。



なんてことを考えてたら、いつの間にか学校に着いてた。

校舎に入ると、なんだかザワザワしてる。

「なんか、騒がしいね」

「そう?学校なんてこんなもんじゃない?」

そうかな、もう授業始まってるハズなのに…。

廊下側の窓から教室を覗くと、こどもたちが若干怯えた様子で授業を受けてた。

怯えてるのは…。

「マルコさん!!」

「スモーカー!!」

「エース!!」

オヤジ様や、他の隊長たちまでいる。

教室の後ろに並んだ父兄の、その凄まじいメンツに、先生まで顔面蒼白になってる。

あれは可哀想だ。

「あ、おかーたんだ」

永実が初香に気づいてひらひらと手を振る。

諦め気味に手を振り返して、先生ごめんなさいと心の中で呟いた。




*****


授業参観終了後。


「ちょっとマルコさん、どういうこと?」

「よい…永実が心配で、よい…」

「グラララ、いいじゃねェか、初香。そう目くじら立てんじゃねェよ」

「オヤジ様もですよ!!ってか、隊長全員揃っちゃって、仕事はどうしたんですか!!」

「今日は休みだよい」

「マルコとエースが2、3日前からソワソワしちまってな、おもしれェから全員で来ちまった」

「イゾウさん…」

とてとてっと走ってきた永実が、初香を睨む。

「おかーたん!イゾウにーたんいじめるの、メッ!!」

「ハハッ、いじめられちゃいねェさ、初香が正しい」

「グラララ、違いねェ」

「でもえみ、イゾウにーたん来てくれてうれしい。じーじも、ありがと」

イゾウさんにウィンクを、オヤジ様にお辞儀をした永実は、そりゃ可愛がってもらえるハズだ。

オヤジ様の相好が一気に崩れたもん。

「フン、あの白ひげが形無しだな」

くぅちゃんにお小言もらってたスモ様が近づいて云った。

「そういうおめェはしっかり嫁の尻に引かれてんじゃねェか、ハナッタレの白猟のクセに」

オヤジ様とスモ様、知り合いなのか。

ってか、スモ様がハナッタレ…。

ちょっと笑いそうになったら、スモ様に睨まれた。

なんだよ、今日はよく睨まれるなぁ、初香、悪くないのに。




結局、3人のチビたちの初めての授業参観は、関係者の大人全員参加で打ち上げまで行われた。

場所はもちろんバラティエ。




*おちまい*