20**年 高1の終わり頃
エイくんは
はっきりと答えてはくれなかった
ただひとつ言っているのは
「好きだから付き合うとかは、自由な恋愛ができないね」
ってこと。
私はこの言葉の意味が
あの頃は全く理解できなかった
たしかにエイくんは現役の先生だし
私は高校生というただの子ども
いま考えれば
高校生相手に付き合うどうこうは
はっきり答え難いとこがあるし
もちろん立場的にも
未成年者を縛り付けることは
できないことだったのだと思う
だからこそ
両思いなんだから
無理して付き合うこともないし
この何気ない日常を幸せに感じてたんだって
本当に今だから思えることです
それに
今は本当にたくさんの人に出会ってきて
エイくんは
そういうユルい付き合い方が
向いてる人なんだって思える
でもね、当時私は
理不尽なことばっか言って
私を子どもだからってからかって
遊んでるんだって捉えてしまっていたの
だから苦しくて苦しくて
毎日いっぱい泣いた
どうして付き合えないの?
可愛くないから?
出会ったときから遊ばれていたの?
なんで好きって言うの?
なんでキスするの?
私は日々、混乱していた
いま思えば本当に
お子ちゃまな考えだった
私のこのお子ちゃまな考えを
エイくんに投げ付け苦しめ続けた
20**年 高2の春
『いつもの場所』である工場の前の道路
エイくんの車の中で
私は聞いた
「私のこと、好き?」
「ごめん。他に好きな人ができた」
車から飛び出して
泣き叫びながら走った
全部自分のせいだって
わかっていたからこそ
辛くて悲しくて涙が止まらなかった
家に帰って
布団の中で泣き叫んだ
いままでの思い出が
全部甦ってきた
携帯電話には
エイくんから着信があった
落ち着いたら電話ください
と、メールもあった
こんなときまで
大人なエイくんの優しさが
私には痛々しかった
「嫌いになったわけじゃない」
後々そう言われたけど
付き合ってはいなかったけど
私はエイくんに振られたのだ