12年前の怪人による連続放火事件の犯人と思われる、蒼い炎を使う怪人らしき者が蒼い炎を使ったと報告が入り、本部に戦慄が走る。
晴斗達は消防隊と共に現場へと急行するが――。
現場は資材置場だった。駆けつけてみると、既に消火された後。どうやらボヤで済んだ模様。
消防隊の他に警察も来ていた。そこには12年前の連続放火事件を捜査した刑事の姿もある。未解決故に手がかりを探しに来ていた。
警察は目撃者から情報を聞いていた。晴斗達ゼルフェノアは出る幕もないかと思いきや、刑事に呼び止められる。
「君たちゼルフェノアの隊員だね。僕は警視庁捜査零(ゼロ)課・警部補の西園寺です」
西園寺は晴斗達に警察手帳を見せる。
捜査零課?初めて聞いた。警察にそんな課なんてあったか?
御堂は気になった模様。
「…あ、知らないですよね。警察にも怪人案件の課があるんです。それが零課。12年前の悲劇の再来を防ぐためにも協力しましょう」
西園寺は協力を仰いだ。
「俺達も蒼い炎を使う怪人を探していたところだが、怪人は逃げたみたいだな」
「相手は人間ではないですからね。ゼルフェノアだけでは難しいかもしれません。司令にも既に連絡はしています。ゼルフェノア解析班が警察にも情報提供してくれたんです」
この案件はゼルフェノアと、警察の共同戦前になりそうだな…。
鼎は全身火傷を負ったものの、なんとか生存したが犠牲者が出た案件だ。なにがなんでもメギドを見つけださなければならない。
御堂は険しい顔をした。西園寺は持ち場へ戻っていった。
今回はボヤ騒ぎで終わったが、現場が資材置場だったことから以前よりも規模は大きくなっている。
ゼルフェノア寮・鼎の部屋。蒼い炎を使う怪人が放火した時間帯、鼎に異変が起きていた。
突如、頭が割れんばかりの頭痛に見舞われたのだ。鼎は頭を抱える。
「鼎、どうしたの!?」
彩音は問いかけるが、鼎はゼイゼイ言っている。仮面で顔は見えないが、かなり辛そう。
「一瞬、見えたんだ…。あの時の犯人の怪人が…」
「えっ!?」
「そいつは『蒼い炎』を使っていた…」
彩音は必死に介抱する。
「とにかく寝室へ行こう。私が支えてあげるから。歩ける?」
「なん…とか…」
鼎の声はかなりキツそう。
12年前の事件を目撃したはずなのに、鼎の記憶にはフィルターがかかっている。犯人の怪人をはっきりと思い出そうものなら、記憶を消されたのか激しい頭痛が起きてしまう。
だが今回は違った。犯人の怪人とリンクする形で頭痛が起きたらしい。
彩音は鼎に頭痛薬を飲ませ、ベッドへ寝かせた。彩音は鼎の左手を握っている。安心させるために。
一体何が起きてるの…?
ゼルフェノア本部。宇崎は西園寺の連絡を受けていた。
「今回は警察との共同ですか。確かに犯人の怪人は幹部クラスでしょうから…あ、はい。わかりました」
零課が動いたということはかなりマズイぞ、これ…。
12年前の連続放火事件、1件目はボヤ騒ぎだったがだんだんエスカレートして行った。怪人は同じ手口を使うのではなかろうか…。
今回は資材置場だったあたり、規模を大きくしたいのか?
いかんせん、怪人の情報が少なすぎる…。
ボヤ騒ぎの目撃者はいたはずなのに、犯人を覚えてないだと!?鼎のように犯人の記憶を消されたのか?
あいつははっきり思い出そうとすると激しい頭痛がすると言ってたな…。
宇崎は彩音に連絡する。
「彩音、いきなりだけど鼎に異変はなかったか?」
「聞きましたよ。蒼い炎のボヤ騒ぎがあったって。あの時間帯、鼎は激しい頭痛がして辛そうでした」
「今、鼎は?」
「頭痛は治まって今は眠っていますよ。鼎は一瞬、犯人の姿が見えたみたいで犯人は『蒼い炎を使った』って言ってました」
「あぁ…そうか。ありがとな」
宇崎は電話を切ろうとするが、彩音が止める。
「もしかして…その怪人が現れたんですか!?」
「確定じゃないが、ボヤ騒ぎもただのボヤ騒ぎじゃないみたいでね。蒼い炎は目撃されている。警察と共同でその蒼い炎を使う上級メギドを捕らえるか、撃破するつもりだ」
「撃破しないと12年前の二の舞になってしまいますよ!?」
「…わかってる。今回は慎重だが、敵は間違いなく幹部クラスだろう。撃破は難しいぞ」
警察が動いたって、ただ事じゃない。ゼルフェノアと警察の連携は昔やっていたが…。
蒼い炎を使う怪人は人間態になり、ビルの屋上にいた。
「元老院からの命とはいえ、『12年前の再来をせよ』とはな〜。…元老院は一体何考えているんだか。ま、いいけどさ。あいつらには逆らえないし」
この幹部の青年、名を飛焔(ひえん)と言う。異空間からよく姿を消すためか、釵游・杞亜羅とは付き合いがあまりない。
飛焔は単独行動を好む。
飛焔の背後にいつの間にか人の気配があった。
「…君、俺の監視かい?」
そこには黒いローブを羽織り、フードを目深に被った、ラインストーンの装飾が施された白いベネチアンマスク姿の女性が。
フードからは長い髪が少し覗いてる。
ローブの下は動きやすい格好。仮面で顔は見えないが年齢は20代前半くらいか?
「貴方の監視をせよとの元老院からの命を受けましたので」
「君も元老院の人間だろ?元老院の人間は仮面を着けてるからわかるよ。人前では顔を見せてはいけない掟だからね。ローブは不自然じゃないか?浮いてるぞ」
謎の女は答える。
「この場所は人が来ませんから。人の多い場所ではさすがに違う格好をしていますよ…。仮面は外せないですが」
「なんで元老院にいるんだ、君は。そもそも君…怪人じゃないだろ。なんで元老院にいるんだ?」
「それは黙秘します」
「相変わらずつれない奴だねぇ」
飛焔はこの元老院の女のことを知っているようだ。
異空間にある鐡一派と元老院は少しいびつな関係にある。
メギドは鐡と元老院に幹部は逆らえないシステムになってはいるが、この女は元老院の一員にもかかわらず、立ち位置が微妙なために幹部と関わっている。
元老院は男性2人だけだったが、この女の介入により3人となった。
飛焔の指摘通り、女はメギドではない。人間だ。なぜ彼女が異空間と人間界を行き来してるのかは謎に包まれている。
彼女の行動理由で今現在わかっているのは「元老院の命だから」。それだけ。
飛焔はいつの間にか姿を消した女がいた場所を見た。
あいつ、元老院に報告でもするのかな…?彼女は監察官らしいけど、そんなもんあったかねぇ?
元老院もよくわからない。なぜ人間を受け入れた?
第11話(下)へ続く。