対怪人組織・特務機関ゼルフェノア本部とゼルフェノア本部寮からほど近くのその老舗洋菓子店・彩花堂は店舗兼住宅になっている。



とあるお店の定休日。

風花はなんとなく店にたまに来る常連客の鼎のことが気になってしまい、彼女が在籍する組織・ゼルフェノアについて検索してしまう。


「司令補佐」って、わからないけどそこそこ階級上だよね?
紀柳院さんの仮面の謎も気になるな〜…って、私何紀柳院さんについて調べてるんだよ!…定休日で良かったぁ…。


風花は検索結果を見る。そこにはこんな感じに出ていた。

『紀柳院鼎司令補佐 仮面』
『紀柳院司令補佐 火傷』
…など。


火傷…?風花はつい、表示された関連記事を見てしまう。紀柳院さんの仮面の理由、火傷って。

そういえば紀柳院さん、常に手袋をしていた。薄手の黒い手袋。肌の露出はほとんどない。首くらいかな…。露出してるの。
暑い夏ですら長袖に手袋だった。まさかなぁ…。


なんでこんなにも彼女が気になるのか、風花はさらに調べてしまう。すると気になる記事が出てきた。

「怪人による連続放火事件?死傷者出たって…12年前だ。なんでこの記事出てきたんだ?
紀柳院さんと関係してんのかなぁ。死傷者の名前に紀柳院ってないけど…何かあるのかな。…そんなわけないよね」


風花はこれ以上深入りしてはいけない気がした。もしこのまま深入りしたら…紀柳院さんにどう接していいのかわからなくなる。



某日。鼎が御堂のシェアハウスに初めて来るおうちデートの日。彼は午前中のうちにこの店を訪れた。

「いらっしゃいませー」
風花は笑顔。御堂はショーケースの生菓子を見ながらケーキ選び。彼は4種類買っていった。


あの人、ゼルフェノアの人だ。見たことある。



某月某日。いちかは鼎からこの店の情報を聞いていた。


「きりゅさんもっと早く教えてよ〜。本部の近くにこんな素敵な洋菓子店があったなんて!」
「いちかが気づいてなかっただけだろ…。あの通り、何回も通っているだろうに」

「きりゅさん行こうよ〜」
「仕方ないな」


その日の帰り、2人は彩花堂へ。いちかはショーケースに食いつく。

「紀柳院さん、この人は?」
風花はなんとなく話し掛けてみた。鼎は答える。
「後輩だよ」


食べるのが好きそうな子だな〜。いちかは目をキラキラさせながらケーキを次々選んでいく。

きりゅさん…お店だと話し方なんかめちゃくちゃ優しくなってない?常連って本当だったんだ。


「今日はケーキパーティーだぜい!」

いちかはめちゃくちゃ嬉しそう。鼎は控えめに自家製プリンとショートケーキ・チョコケーキを買った。シュークリームは売り切れてたのが残念だが。

シュークリームは人気らしく、たまに売り切れてる時がある。



風花は確かにうちの店…ゼルフェノア御用達だと実感。立地上、本部に近いからかな?
ちょいちょい隊員さんが来てる。紀柳院さんみたいに夕方頃制服姿のまま買いに来ている人もいる。

いちかはそれ以降、たまに彩花堂へケーキを買いに来るようになった。季節限定や新作ケーキは必ず買うこだわりがあるようで。



某日。鼎は彩花堂を訪れた。


「ここに来ると癒されるよ。和むんだ」
「そ、そそそ…そうですか!?」

風花、どぎまぎ。嬉しいけど。彼女はシュークリームとプリンを買っていった。



一部のゼルフェノア隊員達を影で支えている、そんな老舗洋菓子店・彩花堂。
甘祢(あまね)一家は今日も美味しいお菓子を提供している。