デートしてきた〜その0

デート、してきた。


前日、映画が3時間ものだと知った榊は少し尻込みしてた。
でも取りやめにならなかった。

「シアター行ってチケット買って、◯◯◯とか×××とか見て回って、」…うんうん…「お茶して、」…う、ん(お、お茶!?)…「映画観ればいっか」う、うん。

朝、メーンイベントまでの予定の確認をした。

お茶……。意味なく小洒落たことはしない榊の口から率先して出るなんて。驚きだった。

榊も楽しみにしてるのか。
それとも自分に合わせてくれているのか。



地下鉄に乗ってぐるりと回った。

普段滅多に通らない方向だから、停まる駅停まる駅で、ホームや利用客を落ち着きなく観察してた。
榊は目をつむったり、自然に適当にどこかを眺めてたりしてた。
(こういう時の過ごし方、携帯を触る以外の方法を知りたい)

「Helvetica展みたいだね」

不意に投げかけられた榊の言葉にどきりとした。
すべての始まりとなったデートのことだった。

「なに、びっくりしてんの(笑)」

気が合うなと思いはじめた時分に、たまたま互いに暇してて、一緒に展示を見に行った。

といっても説明したり語り合ったりするほどの対人スキルが自分になかったから、付かず離れずの距離で見て回り、そのあと近くのファミレスで、ビールを煽る榊とフライドポテトをシェアした、本当に健全なデート。

でも、そこから劇的に色々変わって、いまに至るから、なかなかに大切な思い出の一つ。



…あ、話がそれた。