キィ、キィと鳴く声を聞く。
朝、電車を待つ間、必ず。
声の主は、燕の雛ではない。鳩だ。
鳩が、鳩にいじめられて、泣いているのだ。

ホームの、梁の上で、H溝のなかで、執拗に追いかけまわされ、行き場を失うたび、くちばしで体をえぐられていた。そのたびに羽毛が舞った。

利用客はだれも見上げもせず、降りかかる羽毛を煩わしげに払った。羽毛は力なくアスファルトの上を彷徨う。

鳩も泣く。悲しさに鳴く。
くるっくやぽっぽといったくぐもってあたたかな声以外で鳴く。
キィキィと苦しそうに、いまにも声帯が擦り切れそうに泣く。

自分は、助けるでもなく無視するでもなく、電車待ちの列の中から一人じっと見ているしかなかった。