榊と歩く

所用で、榊と河原を歩いた。
普段バスで通る道を、のんびりと人間の歩行速度で進むと、景色がまた違う。
流されることのない景色の中では、人が、動き、生きていることを感じられる。

河原なら都会でもパノラマに広がるから、人を珍しく俯瞰することもできる。
フォーメーションやランニングコース。掛け声や指示、雑談、自転車のベル。様々な図形が散りばめられ、様々な音とリズムがそこにある。
地下鉄通勤の僕には刺激的過ぎて楽しすぎた。

土手まで降りて川を覗いたりもした。
想定外の大きさのサワガニ?を何匹か見つけてはしゃいだ。
そして土のぬかるみにわずかに足を取られた。
表面だけ乾いた土を見て「チョコレートみたい」としか思えなかった自分の、脳みその低さに愕然とした。コンクリート生活に慣れた証。

川の水面は白く大きく穏やかに反射していた。
捨てられてひしゃげたままの自転車や水面から飛び出た木の枝は時が止まったようにそこにいた。
白と黄色のふさふさがついた、すすきのような草は風に優しく揺れていた。