日曜日は急遽海に

榊に海に連れて行かれた。
いや榊も、人に、海に連れて行かれ、それに自分も連行された。のが正しい。


海辺は快晴だった。日差しは砂浜に降り注ぎ、わずかにハレーションを起こしていた。榊の華奢なスニーカーでさえ、日の光を返し、視界の隅で主張している。眩しい。

この日の海は思いのほか暖かかった。
昨年の今時分は、かなり寒くて、ひたすら日向で丸くなってたのを覚えてる。今年の夏は暑いのだろうか。


荒れてはいないものの、波が大きく忙しなかった。ザザン、ザザンという音にかき消されて、自然と声が大きくなる。けれど不快に思わないのはやはり相手が自然だからなのか。
榊にそう問うたら、一瞬驚いた後「そうかもね」と優しく微笑んでくれた。



子どもたちは、変わらず陽気に出迎えてくれた。

たった一年でそれを面影と呼べるほどに、顔から、体から、こどもっぽさが剥がれ落ち始めていた。
ややアンバランス気味に伸びた四肢はすでにしっかりと日に焼けている。
柔らかさはそのままに、力強さが備わった輪郭線が風のいたずらによって時折衣服に浮かんでいた。

将来を憂うような台詞を聞いたが、見れば、口元には十分あどけなさが残っていた。
自分にもこんな時があったのだろう。




鳥の陰が大きかった。雀、カラスはもちろん、カモメに鷺。榊は雉も見たらしい。
雉については、自分が榊の代わりにナビの登録をしてる時に車の前を過ったというから、ちょっとズルいと思った。

鷹揚に翼を上下させるその動作をいつまでも目で追えるほど、この辺りの視界は開けていた。

こんな景色は久し振りだった。