ビールとカーネーション

祖母の写真の前に薄桃色のカーネーションを供えた。
だから、なんて言っていいのか、昨日はいいことづくしだった。

少し前、買い物途中にふと目に入った酒器を花器にしたいと直感的に思い、即購入した。
僕は基本トロいし優柔不断。こんなことはありえない。でもこれは、決まってた。置き場も、 祖母のところ、となんの迷いもなかった。

実を言えば、気持ちを前に向けさせたくて最近は水を置いてなかった。ごめん、ばぁちゃん。
この間早く仕事から帰れて、忘れずに花屋に寄れたので、カーネーションを一輪買って帰った。
小さな花屋だっから、数種類しかなく、ピンクのバラがとても可愛かったけれど、祖母のイメージじゃなかったから、カーネーションにした。買うとき名前をど忘れして、コレ呼ばわりしたけど。
ぼんやりとしたグリーンの茎が好きだ。グリーンといえば、祖母の必需品のチューインガムを思い出す。

榊も、写真でしか見たことないのに「ばぁちゃんっぽい」と言ってくれた。その説得力、実孫の僕以上。たった一言なのに。


そして、花をいけて数日後の昨日は友達家族と会った。子どもが発表会だという。その子が生まれたばかりの時から二人で見てるので親や親戚の気分。

合流するまで二人で町探検した。
有名な蕎麦屋に立ち寄ってみたら、満席のうえ数組待ったものの限定数食の田舎蕎麦に偶然ありつけた。
時間潰しに寄ったモールで、買いはしなかったけれど、探してた通勤用に良さそうなものをいくつか見つけた。
天気が後半穏やかだった。少し陰って風が出た。
行き帰り、座って移動できた。
夕飯、僕が珍しく肉を欲し、ステーキ、あとは手抜きでイワシの握りやら惣菜やらで済ませたけれど、信じられないくらい全てが美味しかった。

帰宅してすぐの時、ふと祖母の写真が目に飛び込んできた。今日は珍しく主張が強い。ウインクしてるようにすら見える、とまで思って気づいた。まさか? まさか。

珍しく少しお酒飲みたくて、榊も珍しくビールを飲んでたから、一口もらった。本当に一口。
花器と乾杯しようとしたら、祖母の顔が複雑になった気がした。あ、やっぱり? というわけで、そのグラスはしばらく写真前に置くことにした。呆れた笑い顔になってる。
ありがと、ばぁちゃん。