母の、さいごの悲痛な叫びと姿が焼き付いて離れない。

前を見続け、母を抱き締め続けた父親が、強かった。

僕らこどもはなにもできなくて

母と父、そして無抵抗に吸い込まれてゆく棺に、視線を往復させるしかなかった。




でもわかる。

ガバッと口を開けた炉の入り口の残酷さ。

金属の冷たさと
無機質な白さと、影。

僕もねゾッとしたんだよ。




通夜よりも
告別式よりも

一番つらかった。



さいごだから、じゃないよ。
あのつらさは。


僕も、いつかのこと、耐えられそうにない。

やっぱ泣くわ

「よろしく!」の一言で、お願いできちゃったのは助かった、と母。

迷惑じゃなかったか、よかった
(まだ引きずってたか)



これまでドタバタの中でも笑いが多かったから
通夜も、涙滲むくらいかと思ってたけど

やっぱ穴という穴からダラダラだった。


喪服の撥水加工が実力発揮して、涙が全部玉になって、キラキラ縦に並んでるのを見て
パール=涙って言われるのがわかった。



周りの人は
それでも悔いの残る家族を労り、

子や孫がたくさんいれば、
そういう場も自然と賑やかになって
笑いが増える。


実務的に、すべき、と思わないが
感情的には、それがいいと思う。


結婚。子孫。家族。
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