デートしてきた〜メインまで残り2時間。

メーンイベントの映画まで残り2時間。


カフェと緑のあるコンセプト系の本屋に向かった。
この街に来るのは何年ぶりだろうか。榊とは初めてだから5年以上にはなるだろう。しかしそこは年月が経つほどにますます自分にとって居心地がよくなっていた。
それは榊も一緒のようで、何処何処よりこっちの方が好きだ、と話した。それと、少しお洒落してきて良かった、とも。


本は、輸入ものも多く、興味を惹かれるものがたくさんあった。特化してる方向性から、仕事にもかなり役立ちそうで、贔屓の大型書店より使える気がした。

榊の好奇心も十分に刺激したらしく「今度、早くから来てゆっくり見たい。平日休み取って来た方がいいかも」と言っていた。


歩いていたら、テラス席のソファで、大学生くらいの男二人が親密そうに寄り添い、寝転んで端末を見ながら談笑しているのが目に入った。ドキリとする。
が、今度は向かいから、手をつないだ壮年の男性ふたり。

今度ばかりはどうみても「「だよね」」榊も同意見だった。


なんなんだこの街。
自分も、自分たちも手を繋げば良かった。住んでるところとはだいぶ離れたところだったし。

なんなんだこの街。住みたい。

デートしてきた〜まだ余談

チケットは希望のところが運よく取れた。
開場まで4時間近くあったので、近くを散策していたら榊が外国人観光客に道を尋ねられていた。

榊は「よろしく!」と通訳を頼むけれど、こういう土壇場は大の苦手。
一人なら頑張れるが、榊がいるとかえって気弱になり、甘えたくなってしまう。

結果、榊がスマホで道を調べ、片言で説明し…ていくうちに面倒になり、結局20分ほどかけて途中まで案内した。
分かりやすい道まで出たことろで別れた。「Have a nice weekend」榊と笑顔で手を振り見送った。

達成感や解放感といった興奮が遅れてやってきて、笑いと喋りがとまらなかった。



***

来た道を戻りながら、ポケットティッシュがなくなりそうだからと、榊が宣伝用のティッシュを受け取った。
ぺろっと裏返したら、偶然、英会話教室のもので、「出来過ぎだ」と、ふたりで大笑いした。

デートしてきた〜その0

デート、してきた。


前日、映画が3時間ものだと知った榊は少し尻込みしてた。
でも取りやめにならなかった。

「シアター行ってチケット買って、◯◯◯とか×××とか見て回って、」…うんうん…「お茶して、」…う、ん(お、お茶!?)…「映画観ればいっか」う、うん。

朝、メーンイベントまでの予定の確認をした。

お茶……。意味なく小洒落たことはしない榊の口から率先して出るなんて。驚きだった。

榊も楽しみにしてるのか。
それとも自分に合わせてくれているのか。



地下鉄に乗ってぐるりと回った。

普段滅多に通らない方向だから、停まる駅停まる駅で、ホームや利用客を落ち着きなく観察してた。
榊は目をつむったり、自然に適当にどこかを眺めてたりしてた。
(こういう時の過ごし方、携帯を触る以外の方法を知りたい)

「Helvetica展みたいだね」

不意に投げかけられた榊の言葉にどきりとした。
すべての始まりとなったデートのことだった。

「なに、びっくりしてんの(笑)」

気が合うなと思いはじめた時分に、たまたま互いに暇してて、一緒に展示を見に行った。

といっても説明したり語り合ったりするほどの対人スキルが自分になかったから、付かず離れずの距離で見て回り、そのあと近くのファミレスで、ビールを煽る榊とフライドポテトをシェアした、本当に健全なデート。

でも、そこから劇的に色々変わって、いまに至るから、なかなかに大切な思い出の一つ。



…あ、話がそれた。
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