映画づく?

同性愛を取り扱ったフランス文学や映画を調べていたら、詩人ランボー(とヴェルレーヌ)のエピソードが一番にヒットした。

『地獄の季節』を手にした中学時代は、まさか同性愛者とは知らなかった(結局詩集もちゃんと読まなかったし)。なんという偶然。

書簡が収録された全集も気になるが、映画を見つけた。機会があれば借りて観ようと思い、家に帰ってから、榊とそんな話をした。

「ん?」「あるんじゃないか?」
え、どゆこと?
「その話知ってる、て途中から思ってたんだけど、それたぶんビデオあるよ。○○○でしょ?」と、タイトルを言いながら隣の部屋(納戸)を指差す。

はたして、ビデオテープはすんなり出てきた。何度か眺めたことのあるケースの真ん中に鎮座していた。
「うそ…」気づかなかった。覚えてなかった。

求めていたものがある。しかも、榊が、持っている。
偶然への、驚きと喜び。

榊を見やれば
「誰だと思ってんの? 榊ですよ。やっぱこの人合う〜と思ってんでしょ?」と得意げにしていた。

……はい。合います。



エマの言うとおり、
この世に偶然なんてないのかもしれない。

でも、忘れられない映画だった

散々なコメントをしたけれど、好き嫌いで言ったら『アデル、〜』は好きだ。

考えれば考えるほど、気になるし、好きになる。印象深く、後引く作品。



それは作品が「それでも幸せ」論調ではなかったからかもしれない。

「男女でも、同性同士でも、幸せも不幸も、同じだけある。
そして、同性同士だからこその困難も、ある」

不幸自慢して悲嘆にくれるでもなく、それでも幸せだと強がるでもなく、まさにありのままでいく、そのリアリティ。

そんな印象が自分の中に固まり始めている。



自分が感じた「アデルのダメさ」は、それでも、彼女らしさや人間らしさの以外のなにものでもないし。

巻き戻しの効かない、現実という結果を受け入れ、進むしかない、タラレバだらけなのが、本当の人生だからね。



原作も読んでみたくなった(バンドデシネだっけか)。

日曜日は急遽海に

榊に海に連れて行かれた。
いや榊も、人に、海に連れて行かれ、それに自分も連行された。のが正しい。


海辺は快晴だった。日差しは砂浜に降り注ぎ、わずかにハレーションを起こしていた。榊の華奢なスニーカーでさえ、日の光を返し、視界の隅で主張している。眩しい。

この日の海は思いのほか暖かかった。
昨年の今時分は、かなり寒くて、ひたすら日向で丸くなってたのを覚えてる。今年の夏は暑いのだろうか。


荒れてはいないものの、波が大きく忙しなかった。ザザン、ザザンという音にかき消されて、自然と声が大きくなる。けれど不快に思わないのはやはり相手が自然だからなのか。
榊にそう問うたら、一瞬驚いた後「そうかもね」と優しく微笑んでくれた。



子どもたちは、変わらず陽気に出迎えてくれた。

たった一年でそれを面影と呼べるほどに、顔から、体から、こどもっぽさが剥がれ落ち始めていた。
ややアンバランス気味に伸びた四肢はすでにしっかりと日に焼けている。
柔らかさはそのままに、力強さが備わった輪郭線が風のいたずらによって時折衣服に浮かんでいた。

将来を憂うような台詞を聞いたが、見れば、口元には十分あどけなさが残っていた。
自分にもこんな時があったのだろう。




鳥の陰が大きかった。雀、カラスはもちろん、カモメに鷺。榊は雉も見たらしい。
雉については、自分が榊の代わりにナビの登録をしてる時に車の前を過ったというから、ちょっとズルいと思った。

鷹揚に翼を上下させるその動作をいつまでも目で追えるほど、この辺りの視界は開けていた。

こんな景色は久し振りだった。

デートしてきた〜ファイナル

空腹を待つように時間潰しをしていたら結局ギリギリの時間になってしまった。(いや、映画が3:50〜、3時間というのがいけないんだ)

榊がリサーチした寿司屋で遅い昼をとった。

榊はフローズン生(ふたりとも人生初!美味しかった)、自分はグラスワイン(フランス・赤)で、10貫ずつほど食べた。小肌とガリの巻物がさっぱりとして美味しかった。

榊と、絶対にまた来ようと約束した。
これからのデートスポットはこのあたりに変わるかもしれない。


そして映画を観てきた。
その後、アフターはなく、真面目に自宅でまったりした。



映画は正直微妙だった。

観たのはパムルドール賞を受賞した、女性同士の恋愛を描いた作品。




※※※以下、(最大限ボカしてますが)若干のネタバレ含みつつの感想※※※




ついうっかりドキュメンタリー的に見てしまう時があるほど、主役二人は完璧だと思う。
演技が上手いというより、役への感情移入と表現が「完璧」だと思った。

例えば揉めた時のあの激しさとか。とてもリアルで自分は好きだ。
ただ、相手役のエマはどうなの?と思ったけど。(笑)

あくまで主人公・アデルにフォーカスが強く当てられていて、エマ自身のエピソードがほとんどないあたり、

恋して、結ばれて、気持ちがすれ違って…といういわゆる「レズビアン(カップル)」の物語ではない。

ノンケ寄りのバイ?で、セクシャルも人生も迷子気味な、アデルの、物語だ。

「レズビアン」という言葉に純粋な期待をして観ることだけは、危険かもしれない。


※※※※※※※※※※※


それにしても食べ物は美味しそうだった。ケバブに、牡蠣、そしてボロネーゼに、反応した。
洗脳は解けず、帰りに冷食のボロネーゼを買って帰った(食べなかったけど)。



あぁそういえば榊はラブシーンで尻を叩くのにウケたらしい。
朝に夕にわざとらしく叩くのが挨拶となりつつある。

映画自体は「つまんなかった」「期待はずれだった」と言いあったわりに、こうやってネタにはなってるから良かった。

結論や主張が露骨に出てないだけに、会話のネタにはしやすいかもしれない。

今日も、時々話題にのぼっては、あーだこーだとふたりで語らっている。

デートしてきた〜メインまで残り2時間。

メーンイベントの映画まで残り2時間。


カフェと緑のあるコンセプト系の本屋に向かった。
この街に来るのは何年ぶりだろうか。榊とは初めてだから5年以上にはなるだろう。しかしそこは年月が経つほどにますます自分にとって居心地がよくなっていた。
それは榊も一緒のようで、何処何処よりこっちの方が好きだ、と話した。それと、少しお洒落してきて良かった、とも。


本は、輸入ものも多く、興味を惹かれるものがたくさんあった。特化してる方向性から、仕事にもかなり役立ちそうで、贔屓の大型書店より使える気がした。

榊の好奇心も十分に刺激したらしく「今度、早くから来てゆっくり見たい。平日休み取って来た方がいいかも」と言っていた。


歩いていたら、テラス席のソファで、大学生くらいの男二人が親密そうに寄り添い、寝転んで端末を見ながら談笑しているのが目に入った。ドキリとする。
が、今度は向かいから、手をつないだ壮年の男性ふたり。

今度ばかりはどうみても「「だよね」」榊も同意見だった。


なんなんだこの街。
自分も、自分たちも手を繋げば良かった。住んでるところとはだいぶ離れたところだったし。

なんなんだこの街。住みたい。
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