緑陰

朝、日本茶を淹れる

今回のお茶は格別に美味しく感じる。そして目に優しく鮮やかな緑色だ。

マグの中に、春の盛りの草原のような緑陰が広がる。底に落ちる茶葉の陰も、ふっくらとしたモス色。どこまでもあたたかく、やわらかな世界が立ち上り、僕を包む。

香りは強くない。

見目で、ほうっと目が覚めたら、マグを口に運び、静かに啜る。
そこでようやく茶の味を識る。

余計な甘味もなければ、お茶らしい柑橘味も海苔のような香ばしさも、強く感じない。
まだ目覚めきってないからか。いや目覚めきってないならば、出端からタンニンに打ちのめされてもいいだろう。

毎年同じところから銘柄だけ気分で変えて取り寄せているらしいお茶だが、今年は何が違うのだろうか。


茶は母が毎年贈ってくれる。
祖母が亡くなってからだろうか。

最初の年は突然で、数も多く、戸惑ったものだ。
まさか祖母に送っていたものが、こちらに?と思ったが
10年以上、ほぼ絶縁状態だったらしいから
その可能性は低いと思い直した。