大熊さんと双葉さんのはなし
105番地の大熊さんと106番地の双葉さんは元々は、素朴でかわいくはあったのですが地味で、どこにでもいるような目立たない、はっきり言えばあんまりイケてない子でした。
そんな二人に、声をかけてくれたのが原発ペンキ屋さんの親会社、東電さんでした。
彼は二人にこう声をかけました。
「家の庭を少し貸して仕事をさせて貰えませんか?
うちの工場はちょっと庭が汚れることがあるかもしれませんけど、大したことは無いし、十分に注意しますし、何より皆の役に立つ大事な仕事なんです」
東電さんのお誘いに、考えた二人はOKを出しました。
そうして東電さんは大熊さんと双葉さんの家の前に原発ペンキ工場を建設、営業を始めたのです。
その途端、二人は大変身を遂げました。
まず、東電さんが家賃を払ってくれるようになったので、お財布がとっても潤う様になりました。
さらに、たくさんのプレゼントを東電さんはしてくれるようになりました。
ドレスに、化粧品、ネイル。たくさんのアクセサリー。
割のいいお仕事も紹介して貰って、前とは比較にならないくらい二人はお金持ちになりました。
そして元々、元が良かった大熊さんと双葉さんは、お金と品物のおかげでとってもイケてる美女になりました。
周囲からも羨ましがられる程とっても楽しい幸せな日々は、‥‥でも地震と共に終わりを告げます。
大熊さんと双葉さんが震災で受けた被害は大きくて、海沿いだった大熊さんと双葉さんの家もかなり壊れてしまいました。
でも、何より悲しかったのはその片付けをする間もなく、工場が壊れてペンキが撒き散らかされてしまったので、避難しなくてはならず、家に帰れなくなってしまったことです。
大急ぎだったので、着の身着のまま。ネイルやドレスどころか財布さえ持てず、大熊さんと双葉さんは家から逃げ出しました。
そうして、大熊さんはあちこちさ迷い、今会津さんのところで、双葉さんは埼玉君のニュータウンでお世話になりながら考えます。
東電さんから貰ったモノは沢山ありました。
それは間違いなく二人を幸せにしてくれました。
けれど、今それ以上のモノを失ってしまいました。
大好きだったおうち、お庭。
家族の形見や、大事な宝物。
そして何より当たり前だった日常を。
貰った沢山のお金や幸せは、それを担保にしたものだったのです。
二人は考えます。
自分達は間違っていたのだろうか?と。
原発ペンキ屋さんは楽しい日々をくれ、何よりたくさんの人の役に立っていた筈の場所ではなかったのだろうか。
と。
誰もが今を頑張るのに必死な7号区画でそれに答えてくれる人は…誰もいません。
日曜日の鉄腕DASH!ではダッシュ村のヒマワリ実験報告がありました。
随分前からヒマワリによる放射性物質の吸収効果は私達が期待する程ののものではないことは言われていますがどちらかというと今年のヒマワリは震災復興の希望のようなもので植えられたので、あんまり過度の期待はしていませんでした。
ダッシュ村の報告も、そんな感じ。
大きな効果は得られないようであるが、引き続き色々な方法を試していくとのことでした。
結局のところ、できることをできる限りやって行くしかないと言う事なのでしょう。
ヒマワリの他に菜の花も放射性物質の吸着に効果があるとのこと。
24時間テレビの会場で貰った種は、少し前に直播きしておきました。
コスモスとかといっしょで菜の花は強いので、ほんの少し種が落ちたくらいでも結構花が咲きます。
勿論、キレイに咲かせるにはそれなりの手入れが必要ですが。
例えば、二本松の「合戦場の桜」ここは桜もさることながら、側に咲く菜の花も有名。
無造作に咲いているように見えても、しっかり手入れされています。
そこまでは無理でも、表土除去を終えた庭に菜の花の黄色が来年の春、美しく咲いてくれたらいいなと思っています。
ダッシュ村の毎時18マイクロシーベルトと言うのは尋常じゃなく高い数値。
でも、逆に言えばダッシュ村が回復すれば、福島県全てが回復すると言う事。
ダッシュ村は福島の希望。
ずっと応援していきたいと思います。