郡山さんは、音楽が大好きで、明るく朗らかな人です。
いつも歌声が家からは聞こえてきます。
丁度区画の真ん中に位置しているので、区画のどこに行くにも便利で、その関係でみんなとも仲良くやっています。
この郡山さん。福島さんを、少しライバルのように思っています。
あちらが7号区画のリーダーであるのは昔からの事。
でも、実力や人気は多分負けてないと思っているのです。
昔からガッツでいろんなことを頑張ってきた開拓者の子孫という誇りを持っていて、なんでも先頭に立ってやる七号区画の頼りになるお姉さんでした。
大震災の後、郡山さんのところにもペンキが飛んできました。
福島さん達ほどではないけれども、かなりべったりくっついたペンキを見て、庭を見て郡山さんは決意しました。
「大掃除をする!
それも徹底的にペンキを落す!!」
その頃はまだ大家さんは、掃除にいい顔をしませんでした。お金もかかるし、時間もかかる。
それにそんなにひどいわけじゃないんだから大丈夫だ、と。
でも、郡山さんは考えて、考えてそれでも、掃除を決行しました。
庭の花を諦めてむしり、土を香刷り、そして家の大掃除をしたのです。
家族や庭に集まる動物や妖精達の安全の為に…。
始めの一歩を踏みだしたのです。
最初は興味深そうながらも冷ややかな目で見ていた他の人達も、郡山さんを見て後に続いて大掃除を始めました。
その結果、区画全体がかなり綺麗になって行ったのです。
郡山さんの勇気が福島を変えたのです。
今も、まだペンキは濃くて大変だけれど、郡山さんは今日もガッツで頑張っています。
ある人が言っていました。
「友人が、今年の松茸、食べる勇気があるかい?
あるならやるよ。普段の年なら一本一万円くらいする国産マツタケだ、
と言ってた。
本当に美味そうでさあ、籠いっぱいのしいたけやマイタケも。
酒のつまみには最高なのに、どうしても手が出なかった」
新聞にも載っていましたが、本当に天然キノコを売る直売所などは大変です。
毎年採って、手入れをしなければ傷んでしまうキノコのシロ。
なのでキノコを捨てる為だけに取ってると。
さらに福島の名物でもあったあんぽ柿も今年は、出荷、生産が中止されています。
あんぽ柿というのはいわゆる干し柿です。
でも皮をむいて干す過程でセシウムが濃縮してしまうようで、基準値ぎりぎりとかのかなり危ない数値が出てしまうのだそうです。
だから今年、多くの生産者さんがあんぽ柿の出荷を取りやめました。
私も、あのふんわりと柔らかい柿が大好きだったので、あんぽ柿の長い伝統が途絶えてしまうかと思うと切なくなります。
一方で、福島の新米の検査が終わり9割以上が100ベクレル以下か検出なし、500ベクレル以上はなし、という結果が出ています。
田村市の数値も最大で70前後。
白米に精米した場合、半分以下になったと言う話ですので、ある程度はストレスなく食べられるでしょう。
福島の生産者に対し
「今年はモノを作るな。全て廃棄して東電と国に買い取ってもらえ」
という声が多くあることは承知しています。
そうして貰うのが勿論一番なのでしょう。
けれど、国も、東電もそんなことをしてくれないのもまた確かです。ギリギリの中、作付、出荷を見合わせたところもありますが、生活の為に安全基準以下の物を出荷しています。それが正しいとは私は言い切れませんがでも他県の人を被ばくさせようなどという意思は無いとは言えます。
どんなに出荷したくても、危険があると解ったものは絶対に出荷しません。先のキノコやあんぽ柿のように。
放射線について、絶対安全と言う基準はありません。
良く言われる1ミリシーベルトというのも安全宣言の数値ではなく、様々なリスクを含めてもこれくらいなら我慢できる。
という数値です。
1ミリでも心配な人は心配でしょうし、20ミリでも気にしない人は気にしない。
福島県の品を買わない事を、風評被害であるとは、私は言いません。
買うか買わないか、決めるのは、決められるのは一人一人だけですから‥‥。