そのお客様はいつも、雨の日に現れた。
従業員は僕一人、お客もそんなに訪れない小さなレストランに度々現れるそのお客様。自然に話相手になって、世間話でもするうちに、僕はそのお客様が気になりだした。
何故か、だなんて聞かれても答えられない。気になったのだから気になったのだ。強いて理由を挙げるのなら、わざわざ雨の日にばかり来ることだろうか。
『雨男なんだ』
『へぇ、そうなんだ、僕はよく晴れ男って言われますよ』
それとなく気になってた事を聞いてみれば、そう言って困ったように笑うお客様。そんなお客様に相槌を打ちつつ、僕はふと、思った。
――雨男と晴れ男が一緒に出掛けたのなら、天気はどうなるのだろうか――?
疑問に思ったら、もう止まらなくなった。どうやってもその答えが知りたくなった。
『……元気ないね?』
ここ数日、食事を摂るにも布団に入るにもずっと考え込んでいた所為だろうか、お客様に心配をされてしまった。仕事にまで影響しては、もう我慢できるものではない。
これはいけないと僕は想いを打ち明けて、お客様を実験に誘った。
『今度の休日、一緒に出掛けませんか』
『どうしたの、急に』
『急にじゃないです、ずっと考えてました』
『何を?』
『雨男と晴れ男が一緒に出掛けたら、天気はどうなるのかを』
少しの間呆けた顔で固まっていたお客様はいつもの苦笑いをしてから、ちょっとだけ考えるように顎に手を当てて、僕がいくら考えても一向に出せなかった答えを、事もなげにさらりと言った。
『曇りに、なるんじゃないかな?』
そんなの、考えも及ばなかった!
その瞬間、僕は晴れ渡った青空のような心地になった。……これだけ悩んでいた人の心を一瞬で晴々とさせるなんて、お客様はもしかして本当は晴れ男なのかもしれない。
そんな考えを廻らせていた僕は、お客様が店を出る時に僕に向かって放った言葉を、聞いてはいなかった。
『だから君とは出掛けないよ』
―――――
久々小説。店主(天然馬鹿)→お客様(雨男)。店主がデートに誘ってお客様は遠回しに?断った、ってだけの話です。
うーん、意味わからん。。