無機物擬人化ストップウォッチ×腕時計ラストです。
……シリアスです。もう救いようがない……どうやったらハッピーエンドになるのか分からない……書いてる本人はハッピーエンド派なので余計沈みます……。
取り敢えず今までの↓
一話 初会と再会
二話 焦燥と傷愴
三話 悲哀と至愛
設定が良く分からないと思うので次の記事で軽く解説します。
「もう、俺に残された時間は、僅かしか、ないようだ……」
「だから……っだからもっとゆっくり生きろって、あれだけ……!」
壁にもたれ掛かったまま、一指足りとも動かせずにいる腕時計に、ストップウォッチは涙を流して彼の左手を握る。
「仕様が無いだろ、う……これ、が……俺の生き、方、なん、だ、から」
細く、小さく、息を吐いて、腕時計は所々掠れた声で、けれどもしっかりと、言葉を紡ぐが、ストップウォッチは駄々をこねるように嫌々と首を振り、自分の片手を更に強く握りしめる。
「でもっ! でもオレは、もっとアンタと一緒に…っ、ずっと、もっと、いろんなこと、したいのに……っ」
涙を拭うことすらなく、只管首を振るストップウォッチに、腕時計は困ったように眉を下げると、力の入らない手をゆるりと動かして、宥めるように項垂れた頭を撫でる。
「子供、みたい…な事、を、言う……な」
「子供だって構わない! オレはアンタがっ……、アンタのこと……
――愛してるんだ…っ」
二度目の告白に、腕時計は口許を緩ませて小さく笑い。
「……そう、か」
呟いて、腕時計は静かに目を閉じる。
不意に、雨のように降り注ぐストップウォッチの涙に混じって、腕時計の目元から、光が一筋、零れ落ちた。
「あぁ……おれ、も…お、まえ、の、こ…と……」
それっきり、その目が開くことはなく、その口が音を紡ぐことは、なかった。
―――――
新品の電池をフル回転させて、忙しなく働き回る黒髪を見付けた。
相も変わらずその時計は忙しそうだった。
「ねぇーそこの時計さーん」
オレの呼び掛けに訝しげな視線を返す、その顔は何ひとつ変わってなどいないのに、その記憶は、オレを消し去ってしまった。
「何だ、ストップウォッチ」
その、他人行儀な声色が、オレに現実を突き付ける。
総て忘れ去ってしまったキミ。
総て忘れられないままのオレ。
繰り返すのはオレだけで、キミはまた、何食わぬ顔でオレの前に現れる。オレの感情は膨らんでいくだけで、キミの応えを聞ける日は、きっとずっと、来ないのだろう。
けれどまた、キミと会えるというのなら、何度だって、初めから、始めればいい――
...END...