タイトルまんまです。
追記(read more...)から、小説というには拙い文章が読めます。
ちなみにどちらも男性設定でごさいます。
詳しくは総てアップしてから綴ろうかと思っております。 では、一話からどうぞ。
その時計は相も変わらず、忙しそうだった。
「ねぇーそこの時計さーん」
走り去ろうとする黒髪に、間延びした声が掛けられる。呼ばれた黒髪の青年は眼鏡の奥で瞬くと、僅かに眉を上げて、声のした方を見上げる。その先には、明るい茶髪の青年。つまらなさそうな顔が、頬杖を付いてこちらを眺めている。
「何だ、ストップウォッチ」
「キミ腕時計だよね」
「見て分からないか」
自分は相手を見て『ストップウォッチ』だと簡単に判断できたというのに、彼には分からないのか、と腕時計の青年は眉を潜める。
「うーん、確認しただけ。てか、そんなに急いでどーしたの」
「どうしたも何も、これが普通だが」
ストップウォッチの台詞に腕時計は呆れたような顔でそれだけ言い置くと、用は済んだ、とばかりにストップウォッチに背を向けて足を踏み出す。その背中に向かって再度、間延びした声が飛ぶ。
「そーんなに頑張ってどーすんの。もっと楽にさぁ」
「お前こそ何を言っている? 時間は有限なんだ。有効に使うべきだろう」
その声に、勢いよく振り返った腕時計の眉は迷惑そうにしかめられており、彼はストップウォッチの発言を遮るように言い捨てると、今度は決して振り返ることなくその場を去っていった。
「……、そう」
――それは、分かってるよ
今までの気の抜けたような声とは打って変わって淋しげに呟かれたその言葉は、既に彼方へと遠ざかってしまった腕時計には、聞こえる筈がなかった。
……続きます。