もう説明も不要かと思いますが……ストップウォッチ×腕時計です。ドがつくくらいシリアスな展開です。前書きは
こちらから。
取り敢えず続きモノなので読んでない方は先に
1話及び
2話をお読み頂くことをお勧めします。 それでは、3話をどうぞ。
「ねぇ腕時計、少しでも良いから休んだら?」
「必要ない」
心配そうな声に、けれども腕時計は首を縦に振ることはなく、頑なにその足を動かし続ける。しかしストップウォッチも諦める事はなく、腕時計の肩に手を掛けて、今にも何処かへ行ってしまいそうな腕時計を引き止める。
「顔色、悪いから……」
「……っ必要、ない」
腕時計はそれでも、肩に置かれた手を振り払う動作ですらふらつく体を何とか支えて、また歩き出した。その果敢無い背中を哀しげに見つめて、また、腕時計を引き留められない悔しさから、きつく、固く、震える拳を握り締め――。
「腕時計ってば!」
悲鳴のように叫んで、堪らず駆け出して、今にも倒れそうなその身体を、後ろから抱き締めた。
腕時計はそれを振り解く事はせず、否、既に振り解くような体力が残っていないのだろう、大人しくストップウォッチの腕に収まっている。収まった体制のまま、ストップウォッチを振り向く事は無いまま、自分の身体に回された腕に、弱々しく手を添えた。
「……何、」
「お願いだから、少しでいいから、休んでよ……っ」
今にも消え入りそうな腕時計の声に、ストップウォッチの声が、水分を滲ませる。
「……お前は何故、そんなに俺に構うんだ?」
肩に押し付けられた顔、背後から感じる温もりと涙の気配に、腕時計は理解不能だとばかりに疑問を投げ掛ける。その問い掛けに、背後の気配が小さく反応を示す。
「そんなの、」
「……?」
あまりにも小さなストップウォッチの声に、聞き取れない、と腕時計が緩慢な動作で振り返れば。
「腕時計が、好きだからだよ」
「っ、」
真っ直ぐな鳶色の瞳の中で、自分の顔がくしゃりと歪んだ。
……もうちょっと続きます。