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season3 第9話(1)

―なんだろう。胸騒ぎがする――大きい力がうごめいてる感じがするというか――

御堂が住むシェアハウスの共同スペースで、彼はずっと頭を抱えていた。時間帯は夕方。
御堂は帰宅してからこんな感じ。


「御堂、あなた顔色悪いわよ?どうかした?」
このオネエ口調は逢坂か…。

「いや…なんでもない…」
「もしかして、彼女のこと?鼎ちゃん。それで悩んでいたの?」


逢坂にはすぐ見抜かれてしまう。


「あいつ…明日、因縁のあるやつと会うって言うから、ずっと胸騒ぎしていて…。俺…どうすればいいんだ…」
御堂は初めて弱気を見せた。普段の彼とは違い、表情も不安げ。

「鼎ちゃん、ああ見えて強い子よ。ここぞという時にね。過去にそれ…なかったかな」
「………あった」
御堂は思い当たる節があるようだ。

「大丈夫よ、彼女は。あなたは心配しすぎてる。
御堂、お腹空いてない?何か食べる?」
「いえ…まだ空いてないです…」


逢坂に救われるとは。

なんだかんだこのチャーミングなちょっと不思議なおじさんは、人を癒してくれる。時々オネエ口調になるのはご愛嬌として。



翌日。ゼルフェノア本部。


いつも通りの穏やかな朝だったが、少し違っていた。
鼎はいちかと八尾に司令室前で遭遇。


「いちかと八尾、どうしたんだ?2人して」
「八尾ちゃんがきりゅさんにどうしても会いたいって言うから、来たの。
八尾ちゃん、きりゅさんのことが気になりすぎてて…。ちょっとパニクってるっす」

「あ、あの…今日あの人のところに行くんですか!?イーディスとかいうやつに…。私…心配で心配で。
司令補佐をネット配信で公開処刑した人のところにわざわざ行くんですか…?」

八尾は泣きそう。鼎は彼女の頭をいきなりわしゃわしゃした。

「ちょ、ちょっと何するんですか!わしゃわしゃしないでくださいよ!!」
「お前、可愛いな。もう決めたことなんだ。これは私の問題だから。心配してくれてありがとな」

鼎は司令室へと行ってしまった。


残された八尾、心臓バクバク。ドキドキ。
憧れの人にいきなり頭をわしゃわしゃされるって、嬉しいけどパニックが勝ってるよーっ!


いちかは恐る恐る声を掛ける。

「八尾ちゃん…きりゅさん相当覚悟してるみたい。あたし達はこの行方を見届けることしか出来ないよ…」
「司令補佐は絶対生きて帰ってきます!!きますから!!」

八尾はそう言い聞かせた。



司令室。宇崎が鼎にあるものを渡す。それは小豆ほどの小さな丸い物体。

「室長、これは…?」
鼎は手に取り、目に近づけてじっくり見る。彼女は常に仮面姿なため、小さい物は少々見づらい。


「それは超小型カメラだよ。イーディスが待ち受けてるビル内部は、何があるかなんてわからない。カメラはちゃんと音声も拾えるぞ。
それを制服かコートに装着して欲しいんだ。ビル内部の状況がわかるからね。ちなみに映像は本部モニター・御堂が運転する組織車両に備え付けてるタブレット・警察の覆面パトカーも見れるようにしてあるぞ。警視庁も見るかもな」


鼎は超小型カメラをコートの胸ポケットあたりに装着。コートは黒いため、超小型カメラはわからない。

しかし…警察も動くなんて聞いてないが…。


「鼎、警察がイーディスについて捜査してるの…知らなかったっけ」
「今初めて聞いたぞ」

「イーディスこと六道樒(しきみ)は復讐サイトの管理人だが、ターゲットが怪人と『人間』ってのがね。
六道は『復讐代行』で、人殺しをしている可能性が高いわけ。それで水面下で捜査してたらしい。
先月のイーディスのネット配信で、警視庁サイバー捜査班が一気に捜査を進展させたのよ。つまり、今回の鼎が接触するイーディスは、警察からしても好都合なわけ。解析班と西園寺警部も連携してるからね」


水面下で警察が本気出していたなんて。


「鼎、その超小型カメラは午後1時になると自動的に起動する仕組みになってる。お前…あれからイーディスに何かしらメールとか来てなかったか?」
「…来てました。『午後2時までに江東区某所・ビル4階』に来いと」


ここでビル4階にイーディスの元事務所があると判明。
このビルは現在、廃ビルであるが比較的新しいためパッと見わからない。


「解析班、取れるか?」
「なんですか、司令」

「鼎が呼び出された場所の詳細がわかった。江東区某所・ビル4階。警察に伝えといて」

「りょーかーい」



ゼルフェノア本部・隊長用執務室。御堂は副隊長の仁科と話をしていた。
仁科はデスクワーク中。


「仁科」
「ん?なーに、御堂」
仁科は顔を上げ、手を止めた。


「午後に鼎の警護につかなきゃならんから、隊員達をよろしくな」
「御堂、気にしすぎじゃないの?琴浦も警護つくんだからさ」

「そりゃそうだけど…」
御堂に迷いがある様子。

「紀柳院と会えばいいだろ。まだ行くまで時間はある。そこでちょっと話…したら?御堂も少しは楽になるはずだよ」


仁科のおかげで少しだけ気が楽になった。

「仁科、デスクワーク何も今やらなくても…」
「平常心を保ちたいんだよ。新人隊員の訓練も畝黒(うねぐろ)のせいでなかなか出来ないし。
各自、自主トレしているみたいだよ。時に八尾が目覚ましいんだ。司令補佐に認められたい一心でここに入ったから、彼女は本気だ」



江東区某所・ビル。


矩人(かねと)はイーディスの元に来た。

「なんなのよ、矩人。また来たの?一体何の用なのよ…」
「今日が楽しみなんだよね〜。紀柳院鼎を呼び出して何をするのかなぁ」

「矩人は暇なの!?さっさと帰ってよ!」
イーディスはカリカリしている様子。


矩人は意味深な表情を一瞬した後、元事務所を出た。

イーディスはまだ気づいていない。この元事務所とこのフロア…4階に爆弾を仕掛けていることを。


矩人は元事務所の中をイーディスとの少ないやり取りで観察していた。
部屋の片隅にあったポリタンク…灯油かガソリンが入っているな。それも2つ置いてある。用意周到だ。

あれで紀柳院を焼き殺すつもりなんだろうか…。
イーディスは紀柳院に一方的に恨みがあるらしいし、数年前にトラブルがあったとかなんとかで。


矩人からしたら紀柳院よりもイーディスの始末が優先。ゼルフェノアは後。
これは當麻の方針だからだ。



「當麻様、イーディスは相当紀柳院を恨んでいるようですね。一方的にですが…。
紀柳院は始末の対象にはならないんでしょう?」

矩人は當麻と通話。


「紀柳院鼎司令補佐は戦えない身体だという情報が入っている。
彼女は始末の対象外だよ。イーディスだけ始末しなさい」
「了解しました。…當麻様、イーディスの元事務所にポリタンクがありましたが」
「ポリタンク?」

「もしも…もしもですよ?イーディスは紀柳院を道連れにするつもりではないでしょうか」


仮面の司令補佐がイーディスに消される可能性もあるわけか。


「矩人、ビル周辺を監視してくれ。爆破は時限式ではないんだろ」
「時限式もありますよ?こちらで起爆することも出来ますが」
「當麻様の指示通り、威力の強いものを仕掛けましたよ。3ヶ所にね」

「矩人も本気出すと恐ろしいねぇ」
「畝黒家のためならなんなりと」


當麻は通話を切った。矩人は忠実な手下だ。ただの使用人じゃない。



いつの間にか昼近くになっていた。


season3 第8話(4)

怪人2体をひたすら車で追う支部隊員達。
「月島、今どこ走ってんの?俺達は。怪人2体になかなか追いつかないけど」
「茅ヶ崎ですが」

囃(はやし)は茅ヶ崎と聞いて焦りを見せる。
このまま通過して横浜に行ってしまったら東京は間近じゃんか!!


そんな中、運転している高槻はあることに気づいた。

幹線道路なのに、急に車がいなくなったのだ。答えはすぐにわかった。

警察が道路を封鎖してるんだ!一体誰が警察と連携したんだ?
高槻は目を凝らした。ヘリの音が聞こえる。そのヘリは支部のもの。


いきなり囃達に向けて通信が入った。

「神奈川県警と連携して道路は封鎖したぞ。怪人2体を止めるなり、ぶっ倒すなりしてくれ。
横浜にはシールドシステムあるから既に起動した。だから横浜にはその怪人は入れない」

「その声…鶴屋!?」
囃は声を上擦らせる。待望の援軍が来たんだ!
「囃、私もいるんだけど?」

久米島も一緒のようだった。


「いつの間に道路封鎖したんだよ!?」
囃は2人に聞く。

「え?小田原司令がナチュラルに県警に連絡していたよー?『強力な怪人2体が東京方面に向かってるから、東京にはなんとしても入れさせるな』って。それで県警が動いたのさ〜。
鶴屋が符術でさらに結界張ったから最悪、横浜で足止め作戦ってわけ」


久米島、ぽや〜とした言い方。高槻はチャンスだと思ったらしい。

「マキナに攻撃を堂々と仕掛けられますね。注意をこちらに仕向けましょうかね」
そう言うと、高槻は運転席にある謎のボタンを押した。すると車体から銃口が出現。マキナに向けて銃撃。


当然、怪人2体は銃撃に気づき方向をこちらに変えた。彼の読み通り。
高槻はものすごいドリフトで車を停めた。

「この2体、撃破しましょうか」
「高槻さん、相手…強化マキナだぞ!?それも2体。1体だけでも苦戦する敵だってのに」

「鶴屋さんと久米島さんがいる時点で勝機はありますよ。符術使いと火薬のスペシャリストがいるんだから」
「鶴屋はわかるけど、久米島で勝機?どゆことよ」
囃は呟いた。


確かに鶴屋の符術は強力だが、久米島はただ爆破してるようにしか見えないが?


「おい囃、火薬以外にも得意分野はあるんだ。ナメんなよ。あと聞こえてたぞ、全部」

聞かれてた…。



強化マキナ2体は支部隊員と交戦。本部隊員がめちゃくちゃ苦戦していたのもわかるが、なんだよこれ…強い…!
高槻はカーチェイスで酔った高羽の面倒見てる。

「振り回してごめんなさいね。高羽さんにはキツかったかな」
「まだちょっと気持ち悪いですよ…」


「弱点は胸の核、つまりコアなのはわかっているでしょ」
「鶴屋は冷静すぎ…」


「敵の装甲は硬いというから私が爆破してやるぜ!覚悟しなっ!」
久米島は手榴弾のようなものを怪人に向けて大きく振りかぶってぶん投げた!まるで野球の投球フォームになってんぞ…久米島…。

「もういっちょ!」
久米島はもう1体の怪人も見逃さない。だからその投球フォームはなんなんだよ!!


久米島がぶん投げた小型爆弾は怪人にヒット。爆発する。
小さいわりには威力が強いものだった。

「月島、あれ使えあれ」
「今回は楽器型武器は使いませんよ?あれは茶番ですから」

茶番であの強さはおかしいだろ!楽器型武器使わない方が強いのかよ…月島は…。意外すぎる…。


月島はサブマシンガンを構えた。なんだか新鮮に見える。

あのサブマシンガン…通常装備のものじゃないな。月島用?なんかデザインが違う。


囃は油断してしまい、怪人に攻撃を受けていた。

「頼りねぇ分隊長だよな〜。御堂がバカにするぞ」
久米島のこの一言で囃はスイッチが入ったらしい。久米島はわざと煽ったのである。


「久米島…お前!」
「やっとスイッチ入ったか。これだから囃はさ〜。『御堂』というワードに反応したな?してやったり♪」

久米島に嵌められたが、この状況なのでありがとうと思っている。あいつはわざと煽ったんだから。

囃は対怪人用野太刀型ブレードを抜刀すると、一気に斬りつける…というか叩きつける。ものすごい威力。


彼は強化マキナ1体を実質1人で撃破した。
もう1体は月島と鶴屋が交戦中。鶴屋は起爆札と拘束札を巧みに使い、動きを封じた。

「月島!今だ!!」
「了解」


彼女は一気に強化マキナを蜂の巣にする。あらかじめ久米島が爆破したおかげで、コアはあっさりと破壊された。
隊員の長所を活かし、計算され尽くした戦いは支部隊員ならでは。


実は支部隊員、スペックだけなら本部隊員よりも幾分高いが支部ゆえにおざなりにされがち。囃は御堂に早く追いつきたいと思っていた。

彼はまだ分隊長。同期の御堂は隊長。


「怪人2体、撃破しました。東京への侵入は阻止しましたよー。被害は警察のおかげで最小限です」

囃はかったるそうに小田原司令に報告。この通信は本部でも聞いていた。


さすがはテクニカル系隊員が多い支部。
本部・司令室には御堂の姿があった。


「あいつら強化マキナ2体撃破したの!?倒すの早くない!?」

「久米島と鶴屋がいるからね〜。テクニカル系隊員の筆頭でしょ、あの2人。
月島も楽器型武器なしだと本当は強いんだよね。今まで表に出してなかっただけでさ」

楽器型武器でも十分強いと思うのだが――茶番だったのか?


「あなおそろしや」
「なんだよそのリアクション」



畝黒(うねぐろ)家。


「矩人(かねと)。強化マキナ2体が撃破された」
「阻止されたのか〜」

「明日のイーディスを始末する任務は必ず成功させろ。しかし、マキナの襲撃を逃れた社員がいたとはね…。記憶を消さないとな」


マキナの襲撃を逃れた社員とは川辺のこと。

川辺はこの事実をいち早く公表することに踏み切ることにする。会社が怪人の手玉にされていたなんて。それにあの地下研究所は怪人を明らかに作った痕跡があった。

嫌な予感がする…。



「高槻さん、畝黒コーポレーションの社員の救済策ってあるのかな。社員は知らなかったんだろ?…なのにひどすぎる…」
鶴屋はこんなことを呟いた。

「その件はうちの組織も支援するって。怪人によって支配された企業は数あれど、ここまで大きい企業はない。
役員の川辺も動くだろうね。問題は気絶させられた社員だよ……。Dr.グレアが怪人を作っていた地下研究所が明るみに出たら、畝黒コーポレーションは終わるだろう。その前に社員を救済するんだよ。再就職先の支援とかね」


高槻さん、やけに詳しくない?なんで地下研究所がDr.グレアが使っていたとわかるんだ?



本部・司令室。鼎はようやく戻ってきた。


「大丈夫か?少しは良くなったか」
宇崎は優しく鼎に語りかけた。
「あぁ」


鼎は御堂を見た。

「和希、明日…私は行こうと思う。これは私の問題だ。イーディスと決別したいためにも話し合いが必要だから」
「あいつ、大人しく話聞くようには見えないけど…いいのかよ…」

「あいつを復讐から解放させたいんだ。復讐に取り憑かれた哀れな女をな」
「気をつけろよ。六道はお前の弱点知ってるみたいだし、攻撃してくる可能性もある」


「そんなのわかってて言ってるんだよ…覚悟は決めたから」



第9話へ。

無題

話題:おはようございます。
昨日の拍手12個ありがとうございます。今日もちょっと肌寒いです。



春ドラマ…ケイジとケンジ、時々ハンジ。と波よ聞いてくれは観るの確定かもな〜。まさかのテレ朝系…。

ペインディングトレインはまだ様子見ですが。2話も観るだろな〜。
ヒューマンエンターテイメントとあるけど、1話現在ではエンターテイメントしてないよね?がっつりシリアス路線じゃん。これからエンターテイメントに振るのだろうか。

サバイバル要素もあるんで、エンターテイメントなにそれになってんのかなと…。
乗客の中にいた学者っぽい人、あれ…前田公揮だった。日向亘くんは高校生役ですが、1話の流れからして赤楚くんの消防士とまた絡みがありそうよねぇ…。



日曜劇場は早速話題になっているようですが…刑事ドラマ乱立しすぎじゃ、春ドラマ!!
育休刑事も異色作でちょっと気になるけど、たぶん見ないだろうな。


ケイジとケンジはコミカル演出なせいか、見やすいな。前シリーズ観てなくてもすんなり入れるのはいいよね〜。春ドラマで気楽に観れるライトな刑事ドラマって貴重。

シリアスな刑事ドラマは内容にもよるが…ラストマンは2話も観なさそう。2話も15分拡大なんでしょ。
脚本家がTOKYO MERの人なのと主演が福山雅治だからって、扱いが違いすぎるのはどーなんだ?

今までの日曜劇場、茶番にされた?ちょっと悲しい。


視聴率だけでドラマを語るなよと言いたい。
少数派でもゲトレとか、それ以前の日曜劇場にもハマっていた人はいたとは思うんだ…。


個人的にDr.チョコレート1話とゲトレ1話、視聴率どっちが上だったかはちょっと気になる。闇医者もののドラマ、キャストだけならゲトレが豪華だが。

…あ、矛盾したこと書いてしまった。


主演が妻夫木聡vs坂口健太郎だがな。坂口健太郎って何かドラマでヒット作ありましたっけ?坂口健太郎は映画のイメージしかないんですが…。
秋元康原案な時点で、拒否反応が出ているやつは一定数はいると見た。秋元ドラマってそもそもヒットしてなくね?

なにか秋元原案ドラマでヒットしたやつあったか?所々、秋元特有の気持ち悪さがあるせいかと…。うまく説明出来ないが。



自己満小説、しばらく忘れ去られていた支部隊員を出したよ。ごめんな囃達。

しかも無駄にカーチェイスをぶっこむアクション展開にしてしまったが。高槻のポテンシャルが高すぎた。


次で8話は終わります。支部隊員の鶴屋と久米島も久々に出るぞ。支部隊員はおざなりにしていたから8話後半で活躍させたげたい的な。

このまま行けば9話との前後編、確定ですね…。
9話で鼎vsイーディスの決着つく流れにしてますが、敵の思惑も絡んでるんで無駄にアクション描写ありそう。
フラグ、矩人が立ててるし…。


season3 第8話(3)

静岡県某所・畝黒(うねぐろ)コーポレーション――


そこにはゼルフェノア支部の隊員数名と、高槻の姿が。高槻はいち隊員として今回はいる。
「なんで俺らが調査任務に回されてんの?高槻さーん。ここ、本当に大丈夫なのかよ…」

そうだるそうにぼやいたのは囃(はやし)。高羽と月島も同行している。
「そういえばここに来る前、やけに救急車とすれ違ったような…。何かあったのでしょうか」
月島は心配そう。

「それにしても鶴屋と久米島がこないってどういうわけよ!?」
「囃さん、そうイライラしないで下さいよ〜。あの2人は別任務ですってば」

高羽はなんとかなだめる。


「とにかく入りますよ。待ち合わせてた社員が待ってるはず…」
高槻は3人を誘導する。



社内は異様だった。そこには畝黒コーポレーション社員が眠っているのか、倒れているのか床に寝かせられてる状況。数は10人くらい。

デカイ企業だからビルの上の階の状況はどうなってるんだろうか…。社員は無事なのか!?
焦る囃。月島は冷静に倒れている社員達を診ていた。

「囃さん、ここの人達…気絶させられてます。何者かにやられたのでしょうか」

異様な光景におののきながらも1階を進む高槻率いる4人。1階の奥から明らかに役員らしき男性が助けを求めてきた。
かなりパニックに陥っている。


「た…助けて!バ…ババ…化け物が現れたんだ!!君たちゼルフェノアの人達だよね!?助けてくれ!!」

男性は囃にすがる。囃は冷静に聞いた。
「えーと…社員の人ですよね」
「は、はい。私は畝黒コーポレーション役員の川辺と申します」


役員!?しかしこの人えらいパニックになってる。ギリギリ怪人被害を免れたのか…。

「その化け物はどこから現れた?」
「おそらく地下かと…。私達社員ですら、立ち入り禁止になっていましたので」


地下って…例の地下研究所のある場所じゃあ…。
囃に代わり、高槻はさらに川辺に聞く。

「川辺に聞きたい。この会社、不審なところはなかったか?」
「地下は社員立ち入り禁止になってました。役員ですら入るなと畝黒家が言ってましたので。社員はおろか、役員ですらわからないのです」


高槻はいきなりある場所へと走り出す。
「ちょ、高槻さん!?」

囃達と川辺は高槻の後を追う。やがてある場所へと到着した。それは地下へと通じるエレベーター。


川辺はそこで初めて、地下へ繋がる場所を知る。

隠れるようにしてエレベーターがあったなんて。なんで地下を隠すんだ?


川辺も上層部に当たるが、元締めの畝黒當麻に関してはいまいちよくわかっていない。
地下6階へ向かうエレベーターの中で彼は呟いた。


「畝黒當麻について調べているんですか」
「彼は人間じゃない。異形のものだとわかった。
當麻は社員も騙していたんだ。地下に行けばわかりますよ」

高槻の説明にどう反応していいのかわからない川辺。



しばらくすると地下6階へ到着。どんどん奥へと進む高槻。

「高槻さん、歩くの早いって!」
「この先にこの企業の闇があるんですよ。川辺さんが見た『化け物』は怪人のことでしょうね」


怪人!?川辺はおっかなびっくりしてる。


地下研究所は奥まったところにあった。囃達もその不気味さにびくびくする。

「た…高槻さん、入っちゃって平気なのかよ」
「彼らはここには用がないはずですよ。推測ですがね!」

高槻は扉を開いた。重い扉らしく、囃も手伝った。



「…なんだこれ」

そこには異様な光景が。大人の人間が入れるくらいのカプセルが6つある。全て空だった。
高槻は2つのカプセルが壊されていることに気づいた。


「高槻さん、この2つのカプセル…内側から破壊されてません?破片が外側に飛び散ってる」

月島は何かに気づいたようだ。高槻はカプセルを確かめた。あの時…怪人が残されていたカプセルはこの2つのみ。


怪人が自ら破壊したのか!?そうなるとマズイ。おそらくこのカプセルの中にいた怪人は強化されたものだ。


「急いで地上へ戻りましょう!ヤバいことになったかもしれない」
「高槻さんどうしたんだよ、急に慌ててさ」

囃はペースを崩さない。


「怪人が自ら破壊したとしか思えないんだよ。社内のどこかにモニタールームはあるか?川辺」
「ありますよ。社内の防犯カメラの映像、全て見れます」

「モニタールームへ行きましょう!それと本部に今すぐ連絡して!
怪人が暴れている可能性がある。場所を特定しないと…」


強化マキナ2体は自らカプセルを破壊し、街へと解き放たれた。



モニタールームに着いた一同は防犯カメラ映像を分析。
「外部の映像からするに東京方面に向かってる…」
「東京!?おいっ、早く追うぞ!俺達が食い止めないと…!」


囃達は急いで外へ。そして組織車両に乗り込んだ。
高槻は川辺に伝える。

「社員達は気絶させられているだけです。致命的な危害は与えられてないみたいですから。怪人は市民には興味がないようだ」
「俺…どうしたらいいんだよ…。社長が異形?怪人?嘘だろ!?畝黒家がそうなのか!?」

「既に本部とゼノクでも畝黒家について調査しています。あなた達は何も知らずに加担させられてきたんです。利用されたってことですかね…。
このままだとこの会社、闇が明るみに出ますよ。怪人に支配された企業としてね」


川辺は焦る。このまま放置したら社員はどうなる!?
俺達は怪人になすがままにされていた…?



――数年前のある日。御堂は宇崎に問い詰める。


「鼎の謹慎期間、甘くありません?なんでだよ?」
「和希〜、わけを知りたいのか」
相変わらず軽い口調の宇崎。司令とは思えない。

「当たり前だろ。なんで処分が甘いんだよ…。自宅謹慎2週間って…。
復讐した対象が怪人だからお情けか?」
御堂は若干イライラしながら聞いている。


「これにはな〜、説明すると非常に長くなるんだが…それでもわけを聞くかい?ざっと2時間くらいは聞くハメになるよ。
彼女は復讐とはいえ怪人案件で、なおかつ鼎も怪人案件の被害者だろ?ちょっとこれは説明するのが非常にめんどくさいんだな〜これが」


2時間!?2時間も延々聞かされるの!?苦行じゃねぇか!!


「要約すると処分を決定したのは俺じゃあない。蔦沼長官だ」

「ちょ…長官!?なんでまた長官が…」
御堂は驚きを見せる。
「それを説明するのが非常にめんどくさいんだよ…。なんで鼎が自宅謹慎で済んだのか、俺から説明するのは難しい。
ヒントは『長官も怪人案件の被害者』。はい以上。あの両腕、怪人にぶった斬られているからね。だから長官は義手なんだよ」


「非常」というワード、使いすぎてるよ…室長…。

しかしなんでまた、長官が動いてるんだ?ますますわからなくなった…。



強化マキナ2体は静岡から東京方面に向かっている。


「月島!今怪人がどこにいるかわかるか!?」
囃が慌てながら聞く。月島はタブレットで件の怪人をサーチしていた。


「2体の強化マキナはえーっと…今、神奈川に入りました」
「神奈川!?高槻さん、もっとスピード出ないの!?」

「本気出してもいいんですか?怪人とカーチェイスになりますよ」
「今はそれどころじゃないだろ!怪人止めるのが先ィ!!」


「じゃあシートベルト、ちゃんと締めてね。かなり揺れますから」
そう言うと高槻はアクセル全開で怪人を追う。ハリウッド映画ばりのカーチェイスかよ!!

…うちの組織、運転荒い人多くないか?
緊急だからしゃーないけど…。てかめちゃめちゃ揺れるううう!!


「高羽!気を持て!」
「囃…ごめん。俺、酔いそうだ……。着いたら教えて」

高羽、脱落。ぐったりしてる。
月島は意外と平気らしい。


「東京入られたらマズイです!!」
「なんで月島は平気なのよ…」
囃、ぼやく。

「ジェットコースターみたいだからです!」


ジェットコースター感覚で言うなよ!



本部では支部の隊員3人が強化マキナ2体を追っていると情報が入る。



畝黒家では矩人(かねと)が當麻に説教されていた。


「これはどういうことかな矩人。計画よりも早く解き放たれてしまったぞ」

「これをご覧ください。マキナは『自らカプセルを破壊』しています。強化マキナは自分の意思で動いている。
東京方面に向かっていますね。指示してないのに」

矩人はモニターを見せながら説明していた。


「結果オーライだな。ま、この2体を止められる強者がいたら面白いのにね」


その強者達が今、アクセル全開で怪人2体をひたすら追いかける。

「高槻さん、もっと早く行けないの!?」
月島が積極的に聞いてる。

「行けますよ。この車両は特殊ですので」


高槻は長官直属の諜報員。普段は地味な隊員だが、長官から任務を受けると諜報員として活動。

彼の装備は専用の特殊仕様だが、その組織車両もかなり特殊。


「飛行モード、オンにしましょうか」
高槻はあるボタンを押した。するとどこからか翼が競りだし、一気に宙を舞う車。
これには囃達も振り回された。


「ぎゃあああああ!!」
「そ、空飛んでる!!すごーい」

月島、なんで平気なんだよ…。楽しんでるし…。


少しして。

「目標、確認。着地します!衝撃に備えてね」
高槻の組織車両はうまい具合に着地し、じわりじわりと強化マキナとの距離を縮めていく。
高槻の特殊車両は通常モードへと自動的に戻ったが、カーチェイスはそのまま。


「目標を止められるかはあなた達次第です。健闘を祈りますよ」
「高槻さんも協力してって!この車、目標に攻撃出来るんだろ!?」

「出来ますが」
高槻、読めねぇ〜。


なんか高槻の組織車両がボンドカーか何かに見えてきた…。気のせいかな…。
空飛ぶってあり得ないだろ!?
運転席に怪しいボタンがいくつかあったのって…。


「東京入りはなんとしても阻止しますよー!」

高槻がめちゃめちゃやる気になってて怖いんだが。地味な隊員かと思ったらそうでもなかった…。
長官直属諜報員な時点で、かなり特殊だよな…この人…。普段は隊員として活動しているが。


高槻に振り回された支部隊員3人。強化マキナは止められるのだろうか…。


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