城でカンナの子守りをして。母のいないところで父と鬼のような模擬戦をされて。時間の流れが緩い城での暮らしに悪くないとディーアは、思うようになった。

「ディーア話があります。」

「母さん」

「五日後にカンナを秘境に預けることになりました。ディーア貴方も一緒に来てください。」

「えっ。」

「アクアが妊娠して秘境に送り届けた後にカンナを秘境の村に預け貴方も屋敷に戻すことに決めました。」

「母さんすぐのことじゃないか。」

「はい。これから戦局が厳しくなってディーアもカンナも安全な秘境にいなければ巻き込まれてしまいます。」

母が腕を広げカンナともにディーアを抱き締めた。柔らかい感触と香りがディーアを包んだ。

「母さん俺まだ城にいたいよ。」

「ディーア子供には、まだできないのです。母さんも二人と離れることが寂しい。早く戦争を終わらせて迎えに行きますから」

カンナに当たらないように母のうでから身をよじり離れるとカンナを母にあげた。

「母さんの作るごはん鍋の味しかしなくて食べれなかった。何をいれたらそんな味になるかわかんない味とおさらばできるぜハハハ!!」

ディーアは、マイルームから飛び出した。
母の顔は、見えなかったものの一時の母と
の別れる寂しさをまぎらわすしかディーアには、出来なかった。

桜の通りを走り。闘技場の歓声を聞き。ディーアは、また時間の流れが早い秘境に戻されることにため息を漏らした。城での生活をするようになったのは、弟が産まれたことにある。母の兄弟姉妹は、幼いディーアにたくさんのことをしてくれた。かわりばえがない秘境よりも楽しいと感じていた。

広い泉に来たディーアは、泉をじーと見た澄んでいてなんのへんてつのない泉が広く見えるだけ。

♪〜♪〜♪〜

歌が聞こえた。それもはっきり近い。歌のする方まで来るとアクアが泉に佇み歌を歌っていた。アクアが振り返った。ディー
アは、無意識のうちにアクアに近づいて木の枝を踏んだことでアクアに気づかれた。

「あら貴方は、ディーア一人?」

「散歩中だ。」

白夜の兄弟姉妹と顔見知りのディーアは、アクアと顔を合わせて話をしたことがなかった。母は、白夜王国に生まれ暗夜王国の人質として育ってられて。アクア
は、母の対の人質で暗夜王国に生まれ白夜王国の人質として育ってられて。そんな複雑な関係だった話を父ジョーカーから聞かされた。

「なぁ。父さんは、アクアの執事にでもなってた?」

「いや。俺は、そのまま城を追い出されてのたれ死んでいた。」

「どうしてそう言える?」

「アクア様は、暗夜王国では、いないことにされていた。人前で出ることがない控えめな姫様だったから。カムイ様が白夜王国に味方するまでアクア様が実在したことさえ知らずにいた。」

「ふーん。父さん悪運強かったんだ」

「ばーか。カムイ様が俺のこと必要としなければディーアも生まれなかった。俺もいなかったことになったんだ。母さんに感謝しろ」


いつかのようにアクアのことを尋ねた父の会話を思い出した。目の前にいるアクアは、綺麗な人だ。花で例えるならアクアは、池に咲いた蓮の花だと思えた。

「ねぇ。お父さんとお母さん好き?」

はっとアクアの声で現実に戻った。

「父さんは、大人げないところ以外は、格好いい執事として尊敬しているよ。母さんは、そんな父さんを受け入れてる度量がすごい。優しいから大好きだ。」

「カムイが聞いたら嬉しくなるわね。」

アクアが微笑んだ。とっても綺麗だ。

「アクアは、城に帰らないのか?赤ちゃんお腹にいることだし暖かいところにいなくって。」

「お腹が大きくなる前に好きな所に行っても大丈夫よ。それとディーアごめんなさい両親と弟と過ごす時間を終わらせてしまって」

「また会うこともあるからいい。アクア
は、秘境のどこら辺子供を預ける?」

「海を渡って島で赤ちゃんを預けることになってるわ。」

「海ってなんだ?秘境にあるのか」

「ええ。海っていうのは、広い塩気がある
大きな水溜まりのことよ。この子を世話してくれる島の人達に挨拶して時々この子に会いに行って。」

アクアの膨らんでいないお腹を撫でる。その目が生まれる子供を慈しむような表情をしていた。

「ディーア見つけた!」

母がディーアに駆け寄った。

「もう探したよ。」

母さんは、泣きそうな顔でディーアを抱き締めた。

「……母さん苦しい………」

「アクアの近くにいたからよかったものの城の外には、一人で出っては、ダメ!」

さらにギュウとディーアを抱き締めた。
ディーアは、身動ぎもせずに母が離すまでそのままでいた。父の嫉妬する視線がなく母に抱き締められるのは、いつだったのか


その頃ジョーカーは、カンナ寝かしつけるまでカンナのおしめを替えっていた。

「母さんは、今ディーアの相手してるからオムツ替えようなー」

カンナを抱き上げるだけでしっこされることに悪戦苦闘しながら寝かしつけるまであやしていた。

「ようやく眠ったか。カムイさんが戻るまで俺もふぁぁあ」

「ディーア眠ったわね。」

「アクアも城に帰ろうか。暗くなってきたし。」

「えぇ。」

ディーアを背中におぶりアクアと城に帰る。

「カムイ2ヶ月間ディーアを城に過ごして楽しめた。」

「うん。ジョーカーさんのいないところで
美味しい紅茶淹れてくれて。静な所に行ってカンナを寝かしつけて。優しいお兄さんでいてくれて嬉しいよ。少しは、ジョーカーさんのこともカンナのことも私のことも記憶に残ったかな」

「大丈夫よ。ディーアだけでなくカンナもちゃんと兄弟がいることも。親であるジョーカーもカムイのことも記憶に焼き付いてるわ。」

「アクアが言ってくれると心強いね。次は、アクアが生まれてくる赤ちゃんにお母さんお父さんがいることを教える番だね」

「ありがとうカムイ。落ち着いてから城にもどってくるわ」


星が出る空の下をディーアをおぶるカムイと新しい命を宿らしたアクアが城に帰っていた。


白夜兄弟姉妹と交流があるディーアが初めて妊娠直後のアクアのお話するところを書けてよかったです。アクアは、薄幸で波瀾万丈な所があるもののほんのすこし母親になる喜びを書いてみたくなった。ちなみにアクアの婿は、誰かは、想像でおまかせします。