「カムイかわいそうにまた不自由な場所に閉じ込められて。」
愛娘のカムイの髪をとかしながら話すミコト。声が出せないカムイは筆談しようと紙の上に書き込んだ。
『可愛そうじゃない。マークスさんは私の治療をしに透魔王国へ連れてきてくれる。』
サラサラと字を書いてミコトに見せた。
『透魔王国の外へ出られないお母様と過ごせる時間が増えているから気にしていない。』
コックンと頷く。ミコトは愛娘を抱き締めた。
白夜王国と暗夜王国の戦争で辛うじて暗夜王国が勝利した。
父から王位を譲られたマークスがこの戦いで得られたものと無くしたものがあった。
得られたものはカムイを妻に迎えお世継ぎに二人恵まれたこと。無くしたものは。
「マークスさん。」
車椅子を押しながらミコトはマークスの元へきた。
「ミコト女王。カムイの様態は?」
「上々です。初めて診察に来たときよりも顔色はよくなっているわ。」
「パクパク」
「まだ声が竜石を通らせないと話せないか。」
「マークスさんカムイの治療はまだ始まったばっかりです。カムイが自分で声を出すまでの辛抱ですよ。」
溜め息を吐いたらミコト女王に一喝された。
すっと竜石をマークスに見せるカムイ。
「‥‥‥」
「歩いていた時が恋しい。すまないお前を生き返らせるために透魔王国にきたというのに。体を不自由な状態で」
「‥‥‥」
「皆まで言うな。」
「透魔王国を散歩したい。わかった行こう。」
マークスはカムイの車椅子を引きながら歩いた。
「カムイとままごとでもしていなさいエセ旦那。」
二人が見えないところでミコトはそう言った。