雷神刀に勝つには槍が近道。父リョウマの刀に憧れたやんちゃな子供のシノノメはそう考えていた。秘境を出て母の率いる軍に入ってから槍を目指したきっかけをリョウマに話したことであきられていた。

「お前に雷神刀を託す日は遠すぎるな」

父の皮肉を言われてもシノノメは槍術師から剣が扱える剣士にもダークプリンスにもチェンジすることはなかった。子供の頃から続けたことをシノノメはただ捨てるのが惜しかったから。槍に強い斧と弓が弱点であっても習得した奥義で決めればノックアウト。自分には槍が半身である。剣は父リョウマだけでいい。剣も祓串を扱えてかつ竜に変身できる力を持ったダークプリンセスは妹のカンナ。弟ならダークプリンスでいい。

シノノメには刀相手でも負けない自信があった。ドラゴンキラーに斬られるまでは。

「あっ!シノノメ探したよ。」

「お兄ちゃん傷痛くない?痛かったらカナが治してあげる。」

医務室にシノノメがいないと気づいた双子が探しに来た。

「ちみっ子はもう寝ろ。ここからは大人の動く時間だ。」

しっ、しっ、と追い払う仕草を双子に向ける。目が覚めてもう一回寝ようにも眠れなかったシノノメは寝静まった城の庭を歩いているうちに考え事をしていた。

「いいのかカナ勝手に祓串持ち出して使っても?バレたら荷物係に怒られるぞ。」

「ヒノカおねえさんから分けてもらったって言うことにするからいい。」

「妹の子供の話しに合わせるからなヒノカねえさんは。」

回復が低そうな祓串を持っているのはヒノカと双子くらい。母カムイは回復を続けるうちに次のステップを踏んでいる。

「シノノメ医務室に戻ろう。ちゃんと治してもらおうよ。」

「やめろ!」

シノノメの手を掴もうとしたカンナの手がぴたっと止まった。

「負けた悔しさを蒸し返す話を聞かせるな!俺なら一人でいても大丈夫だ。槍で‥‥槍で‥」

槍の柄を握った手が震えていた。

「相手の剣士は俺よりも戦場経験も浅い下端だ。剣もだ。ドラゴンキラーじゃない刀だったら俺は、重傷を負うこともなかった!」

弟と妹にまくちたってた。

「チッ」

ひっくとしゃくりあげる声を弟が出した。あっまずいと思った時は遅かった。

「うゎぁぁん!」

カンナが泣き出した。夜中に大声で泣かれると誰か気づかれる。もしリョウマが見たら最悪だ。怪我人のシノノメを容赦なく「歯を食いしばれ」をされる。そうしたらカンナもまた泣かれる。

槍を地面に置くと両腕で双子を抱き抱える。

「物静かな場所」

シノノメは頭に行きたい場所を思い浮かべながら城の外へ走った。

城の外へ出る時に頭に行きたい場所を思い浮かべる。そうするとその通り場所に外へ出られる。

脇腹が痛いけど今はカンナを泣き止ますことしかシノノメの頭にない。カナも一人にさせられない。

続く。