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毎日榎益妄想

すいません、中途半端なもん書いてしまいました。
本当はもっとあれなはずだったんですが、持ち込めませんでした。
面倒くさい感じが好きなんです。いつまでもウダウダやっていてほしい気もするけど、ガッツリとしたのも書きたいです。

益田君を可愛くしてしまうと病む傾向にあることがわかりました。病益です。放っておくとすぐそっちへ行ってしまいますので、軌道修正しています。
いや病益も好きだし病榎も好きですよ。
そんなのがいつか書けたらいいな

5月の病・続き(榎益)

給湯室から手を引っ張られて隣の元客間の倉庫に入った。窓の外の爽やかな雰囲気とは別で埃っぽい。雑然とした倉庫がそう思わせるのかどことなく全体的に雰囲気が嘘臭い。それでも穏やかな青空が窓から見えた。

口付けの合間に漏れる吐息が扇情的で興奮する。頤を掴まれて頭部を固定されながら浅く吸われ舌を誘い出されてから益田の頭は思考を停止した。痺れるような感覚が後頭部を襲い 、それから身体中に伝播した。
益田の手は榎木津の腰の辺りに遠慮がちに漂っていて、力を込めるでもなく拒絶の意思を示すでもなくどうすれば良いか決めあぐねた結果、ただ服の端を弱く握りしめた。それが益田らしくて笑ってしまう。
もっと、求めてくれて良いのに。
思いながら榎木津は益田の両腕を自分の首に回すように持ち上げた。
榎木津の首に腕を回す形になった益田は踵を伸ばして爪先立ちの格好になる。そうしなければバランスを崩して後ろ向きに倒れてしまいそうだからだ。頭一つ分は身長の高い榎木津に合わせるとそうなる。
そうなるが、それは必死に榎木津にしがみつく格好になっている事に気付いていない。何故なら必死だからである。
「え‥‥榎木津さん‥‥お茶は、どうします‥‥?」
息継ぎの合間に益田が尋ねる。もはや呂律の怪しい口調で、一生懸命考えた結果それしか出てこなかったというような質問をした。
「ん‥後で飲むよ。緩くてもいいから」
冷めてたって良いぞ。言いながら益田の身体を壁際まで追い詰める。
バランスの悪い格好で、しかも後ろ向きに歩く益田は殆ど榎木津に抱えられる様な格好だった。途中、棚や机にぶつかって何かがバラバラと床に落ちたが気にしている余裕はない。
頭が壁にぶつかる。
口付けが深くなる。舌と舌が絡み合う音が聞こえて益田は今更ながら赤面した。浮いた腕の隙間から榎木津の手が益田の脇の辺りを這う。薄い胸を撫でられてシャツ越しだというのにゾクリとした。
「ぅ‥んン‥‥っ」
小さく漏れる声が鼻にかかった様な甘えた音になってしまった。益田ははっとしたように目を見開いた。
「はっ‥‥あ‥‥あの、」
「ん?なあに?」
赤くなっている益田の頬へ口付けながら榎木津はにやにやと笑ってみせる。益田は、うぅー‥‥と小さく唸ってから涙目になった目で弱く睨み、恥ずかしさのあまり顔を伏せた。
くっくっと喉の奥で笑われた気配。背中に右手が添えられ、頭には左手が。それからゆっくりと、髪を梳くように頭を撫でられた。

「お前は本当に可愛いね」

榎木津を知るものが聞いたら耳を疑いそうな程、それはあまりにも甘い響きを過分に含んだ声だった。
「っ!‥‥‥‥‥あ‥ぅ、」
そんな言葉を耳に落とされ、最早茹で蛸のような有様の益田は身体に力が入らないから榎木津にしがみつく。
「ずるいですよ、そんなの‥っ‥」
「‥‥ずるいのはどっちだ。僕はこれでも我慢しているんだ。なのにお前が、」
しがみつかれた腕を解いて壁に押さえつけた。益田は伏せた顔をそろそろと上げる。榎木津の端正な顔が間近にあった。目が合う。ガラス玉の様なと言われているその目。しかし、益田はこれ程生々しい本物を知らない。

真正面から榎木津の顔を見たのはいつ振りだろうか。常に視界の端で見ていた。目を逸らしていた。綺麗だから目が眩むので益田のような人間には視界に収めるのも一苦労なのだ。
大きな鳶色の瞳が長い睫毛の影を映して暗く光る。窓からの光を背負っているせいで陰影をつけた探偵の顔は彫りの深さを強調していつもより数倍、人形染みて見えた。苦悩と憂いを知らしめる為に彫られた彫刻のようだ。目だけに生を感じる。
自信に満ち溢れた表情なら見飽きている。常にそうだから。だから、こんな表情は珍しくて目が離せない。
「ーー悪いよ。僕は、お前が好きなんだ」

それは、多分本人にすら無自覚のものだったのだろう。榎木津は、本当に困ったという顔をして笑った。子供のような無防備な顔だった。益田は胸が詰まった。息が出来なくなる。
「え、‥‥榎木津さん、ぼくは」
ぼくは‥‥、僕は。
俺は。
俺だって。

声が出ない。
頭の中で反芻する言葉は喉元でせき止められて声帯を震わせる事が出来なかった。子供のような顔をした榎木津を抱きしめようにも腕は壁に固定されていて叶わない。
だから。
益田は顔を傾けて榎木津の唇へ己がそれを重ねた。
離して、もう一度。
なるべく目は開けたまま、榎木津と視線を合わせる様に。とても恥ずかしくて勇気が要るけれど、それをしないと榎木津を傷付けてしましいそうだったからだ。
こんなこと位で傷付きやしないだろうけれど。自分如きには榎木津を傷付けられやしないだろうけれど。

榎木津の長い睫毛がゆっくりと伏せられる。益田は、それを見るのが好きだった。


嘘臭い部屋の中で、切り抜かれた窓の外の空だけが未だ快晴。鮮やかで爽やかで穏やかな5月の空である。
給湯室では益田の淹れたほうじ茶が、その温度をひたすらに冷ましている。












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