ここはどこだろう。シノノメは双子と一緒に知らない場所に来ていた。

「物静かな場所」

確かにシノノメは頭に静かな場所を思い浮かべながら星界の城を出た。森か。神社に出ると思っていた。だけどこの場所はどちらでもなかった。カッ。カッ。カッ。足音が聞こえた。先客だろうか。

「あらお客様いっらしゃーい。」

若い女性が愛想よく笑顔を見せた。

「ねぇおねえさんここどこ?」

「ここは竜の門。お客様運がいいわー。異界に繋がる扉に来れる人は限られているのよ。」

「異界?」

「そうよ。紹介まだだったわね。私は秘密の行商人アンナ。行商人でありながら竜の門の案内人よ。」

「おねえさん商人なの?」

「ええ。そうよ。色々な異界を渡り歩いては竜の門に来るお客様に異界の商品を販売しているわ。」

「でもシーフだね。」

「商人やっていると色々クラスチェンジする必要があるのよ。さぁ私の自己紹介はしたわ。お客様の名前は?」

「俺はシノノメ。」

「僕はカンナ」

「私はカンナの双子の妹で名前はカンナ。カナって呼んでね。」

「カンナ?ねぇあなたたちのお父さんとお母さんの名前は?」

「お父さんがリョウマ。お母さんがカムイだよ。」

「カムイ王女様の子供に双子で会えるなんて思ってなかったわ。」

「誰がなんと言おうとカンナもカナも俺の弟と妹だ。」

「商人のおねえさんお母さんのこと知っているの?」

「えぇ。異界では有名よ。ただカムイ様は異界で複数もいて特徴もバラバラでどれがどれだが。性別も。結婚した相手も。家族構成もよ。」

「異界にカナはいたの?」

「カムイ様が王子さまなら一人娘が生まれているわ。こうしてカムイ様の子供が双子として存在しているのは初めてね。」

アンナはまじまじと双子のカンナを見る。よほど行商人からすれば珍しいのだろう。

「なぁ出口ってどこにあるんだ。」

「出口はあっちの扉。」

アンナが指を指すとリリスが開く門と同じ光があった。

「これは失礼するぜ。」

「あっちょっと待って!お客様。」

アンナがシノノメを引き留める。

「生憎手ぶらで来ちまったから商品の紹介されても買えねぇぜ。」

「いいえ。今日はタダよ。」

「ふーん。タダ‥っていいのか?!」

「いいに決まっているじゃない。初めてきたお客様には一つ選んでもいいのよ。ついでねお金払うだけで異界に通れるようにもしてあげる。」

にこやかに笑うアンナにシノノメは乗ることにした。

続く。