馬を走らせてジークベルトは王城へ向かう。王城へは死霊の森を通り黒竜砦を通りすぎる。白夜王国に勝利したといえ暗夜王国の土地は食物を育つのに不適な土地だということに変わらない。そんなにすぐに白夜王国のような土地にならず。今は不気味な森に入り馬を走らせる。

「ヒヒーン」

「どうしたんだい?」

剣の柄を掴む。化け物が出たのかもしれない。ところがいくら待っても化け物は出なかった。

「ブブー」

「大丈夫だよ。ノスフェラストは出ない進んでくれ。」

「ぶー」

イヤだ!イヤだ!と首を横に振った。顔を正面に向けて鼻息を荒く出した。

「わわっ。コラッ!勝手に行くな。」

馬がそのまま森の沼地に入った。

「どうして言うこときかないだ。沼地は化け物出やすいから入ってはいけないと‥‥あっ!」

沼地に車椅子に乗った女性がポツリといた。馬から降りると車椅子の女性の元へ走った。

「どうしてカムイさんがここにいるんだい。」

「‥‥‥‥パクパク」

声が出ないカムイさんはジークベルトに何か伝えようとした。でも声が出ないから何を言っているのかジークベルトには分からなかった。

「両手を縛られているじゃないか。一人で怖い思いしただろう。」

ナイフを取りカムイの手を縛っていた縄を切る。

「‥‥‥」

ありがとう。短く口パクでお礼を言った。足に暖かい物が流れるのを感じた。カムイは両手で顔を覆った。匂いがする液体の流れが止まるまでジークベルトは待った。

「カムイさん一体どうして死霊の森にいるんだい。父上と一緒じゃないのかい?」

カムイは懐から筆を取り出そうとした。でも首を横に振った。声が出ないカムイにジークベルトはポケットからメモとペン差し出した。

「使ってもいい。なにかあったのか話てくれ。」

『マークス兄さんを慕っていた女の人に連れて行かれました。手も縛られて。筆談に使うものも壊されて。』

「そんなことを!特徴は?すぐに訴えないと。」

父マークスがカムイを妃として迎え入れた時にはカムイは身体は不自由になっていた。声を出すことができなくなった。筆談でコミュニケーションを取ることになった。足が不自由になったから車椅子生活になった。それを女の嫉妬でカムイさんを化け物が出る森に置き去りにしてジークベルトは怒りがこみ上げてきた。

『わからない。ここへ連れて行かれた時に目隠しされたから。』

頭を垂れたカムイ。カムイを一人にさせられない。懐から魔法道具を取り出す。

『あらジークベルトどうしたの?』

カミラの声が聞こえた。簡潔に死霊の森に置き去りされたカムイさんを迎えにきてほしいと頼んだ。

『わかったわ。今行くわ』

魔法道具の声はそこで切れた。カミラのことだからそこに馬車を連れてくれる。馬にも飛竜に乗せようにもカムイは足を動かせない。カミラがくるまでジークベルトはカムイの近くにいることにした。

区切り。