ドラゴンスレイヤー4

雷神刀に勝つには槍が近道。父リョウマの刀に憧れたやんちゃな子供のシノノメはそう考えていた。秘境を出て母の率いる軍に入ってから槍を目指したきっかけをリョウマに話したことであきられていた。

「お前に雷神刀を託す日は遠すぎるな」

父の皮肉を言われてもシノノメは槍術師から剣が扱える剣士にもダークプリンスにもチェンジすることはなかった。子供の頃から続けたことをシノノメはただ捨てるのが惜しかったから。槍に強い斧と弓が弱点であっても習得した奥義で決めればノックアウト。自分には槍が半身である。剣は父リョウマだけでいい。剣も祓串を扱えてかつ竜に変身できる力を持ったダークプリンセスは妹のカンナ。弟ならダークプリンスでいい。

シノノメには刀相手でも負けない自信があった。ドラゴンキラーに斬られるまでは。

「あっ!シノノメ探したよ。」

「お兄ちゃん傷痛くない?痛かったらカナが治してあげる。」

医務室にシノノメがいないと気づいた双子が探しに来た。

「ちみっ子はもう寝ろ。ここからは大人の動く時間だ。」

しっ、しっ、と追い払う仕草を双子に向ける。目が覚めてもう一回寝ようにも眠れなかったシノノメは寝静まった城の庭を歩いているうちに考え事をしていた。

「いいのかカナ勝手に祓串持ち出して使っても?バレたら荷物係に怒られるぞ。」

「ヒノカおねえさんから分けてもらったって言うことにするからいい。」

「妹の子供の話しに合わせるからなヒノカねえさんは。」

回復が低そうな祓串を持っているのはヒノカと双子くらい。母カムイは回復を続けるうちに次のステップを踏んでいる。

「シノノメ医務室に戻ろう。ちゃんと治してもらおうよ。」

「やめろ!」

シノノメの手を掴もうとしたカンナの手がぴたっと止まった。

「負けた悔しさを蒸し返す話を聞かせるな!俺なら一人でいても大丈夫だ。槍で‥‥槍で‥」

槍の柄を握った手が震えていた。

「相手の剣士は俺よりも戦場経験も浅い下端だ。剣もだ。ドラゴンキラーじゃない刀だったら俺は、重傷を負うこともなかった!」

弟と妹にまくちたってた。

「チッ」

ひっくとしゃくりあげる声を弟が出した。あっまずいと思った時は遅かった。

「うゎぁぁん!」

カンナが泣き出した。夜中に大声で泣かれると誰か気づかれる。もしリョウマが見たら最悪だ。怪我人のシノノメを容赦なく「歯を食いしばれ」をされる。そうしたらカンナもまた泣かれる。

槍を地面に置くと両腕で双子を抱き抱える。

「物静かな場所」

シノノメは頭に行きたい場所を思い浮かべながら城の外へ走った。

城の外へ出る時に頭に行きたい場所を思い浮かべる。そうするとその通り場所に外へ出られる。

脇腹が痛いけど今はカンナを泣き止ますことしかシノノメの頭にない。カナも一人にさせられない。

続く。





























ドラゴンスレイヤー3

「シノノメ気がついた。」

目の前にカンナそっくりの天使がいた。自分は死んだのか?

「お兄ちゃん私は誰か分かる?」

天使が弟と妹にそっくりなのだな。変な剣に翻弄されて。メイドに急所を当てられて。襖が開く音が聞こえた。今度は母カムイに似た天使がー。んっ?似すぎてないか?大きな瞳から大粒の涙をこぼしシノノメをにらみつける。

「バカ!!シノノメ危険なことをばっかりして!親より先に逝くことは許しません!」

涙声混じりで叱る母。ここは医務室だ。シノノメは生きていたのだ。

パンっ!襖を豪快に開くと父リョウマが入ってきた。

「シノノメ歯を食いしばれ。」

ガッツ!言うが早くシノノメは殴られた。もう目が覚めた。ここは天国じゃない。シノノメは生きていた。

「お母さんが駆けつけるまでシノノメ危ないところだったんだよ。」

「それでサクラおねえさんとジョーカーおにいさんが大急ぎで手当てもしてもらって。カナも祓串が使えたから手伝ったの。」

「カンナ。カナ近い。少し離れてくれないか。」

双子は解説してくれたのはありがたいけど耳の近くで言われるうるさい。

「俺が剣に負けた。槍では剣に勝ってる寸法だろう?」

変わった刀を持てシノノメを襲った剣士は強くもなかった。なぜシノノメは負けた?

「シノノメ。カムイの特技は何だ?」

「竜に変化が出来ること。」

「竜には弱点になる武器が存在する。竜の鱗を斬り。竜を殺せる剣にシノノメは殺されかけた。」

「?俺竜になることが得意じゃないぞ。」

「竜に変身出来る出来ない関係ありません。母さんはドラゴンキラーが弱点です。母さんの弱点は息子であるシノノメにも受け継がせてしまったのです。」

「初めて俺の弱点に気づいたぜ。」

幼くとも竜になれる双子と同じ弱点を持っていたことに気づかなかった。

「シノノメ。槍に弱い武器使いに勝ってる過信が仇になったぞ。どれだけ槍が強くともドラゴンキラーの前では大怪我の元になる覚えていろ!」

続く。


















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