娘は僕が仕事から帰ると大歓迎してくれる。
昨日もドアを開けたときから「おとうしゃん・・」って言う大きな声が聞こえ、僕はとても嬉しくなった。
それに昨日はとっておきのサプライズもあった。
いつものように娘に郵便物を渡したら、娘は「あいがと」と言った。
「どうぞ」は早い時期から言えたけど、「ありがとう」はなかなか言えなかった。
娘の生まれて初めての「ありがとう」かもしれない。
僕の方こそ「ありがとう」だ。
最近、帰るコールがますます楽しみになってきた。
妻さんの声のうしろで、娘が「もしもし?」って言っているのが聞こえる。
妻さんから電話を渡された娘は、そこから聞こえる僕の声に、まだ応えてくれない。
僕は「もしもし、お父さんですよ、もしもーし」って必死。
しばらくの間、言い続けたけど、健闘むなしく返事はなかった。
娘は電話の真似っこが上手で、「もしもし」も、相手がいないときには言えるのに。
最後に娘の「おっ?」って言う声が聞こえて僕は笑ってしまった。
家まで飛んでいきたい気分だ。
僕は虫歯で苦労したから娘の歯磨きには他人よりも神経質だと思う。
少し前に「最近歯医者さんでは虫歯治療で来院するケースより、フッ素で来る人の方が多い」というニュースを耳にした。
フッ素すれば虫歯予防に効果があるそうだ。
早速兄に聞いたら甥も姪も年に何回かフッ素してもらいに歯医者に通わせているとのことだった。
娘は1歳10ヵ月だから、さすがにまだ早いかな、と思っていたけど、歯科検診に行くときに妻さんに聞いてもらったら、もうフッ素してもらえると言うので、お願いすることにした。
僕の小さいときにもフッ素があったらな、と羨ましく思いつつも、娘の歯磨きに神経質だった僕は心配が一つ減って、ほーっとした。
娘は歯医者さんで泣かずにお利口だったと妻さんから聞いた。でも、最後のうがいが出来なかったとのことで早速お風呂で練習した。
僕がクチュクチュぺーするよって、実際に手本を見せ、娘の口に水を含ませる。
すると、ゴクンしたあと、「ちゅくちゅくぺ」って言う。
何度やっても、ゴクン、「ちゅくちゅくぺ」
う〜ん…かわいくて仕方無い。まったくの親バカだ。
ツボにはまって何回もやってたら娘がゲップするまでやってしまった。
ごめん。
夜、ベビーベッドに入ってからも、まだまだ遊びたい娘は、ごろごろしながら、意味があったり、なかったりする言葉をなにやら話す。
それで、結構長い時間粘ってから眠る。いつも妻さんが眠るまで見ていてくれる。
昨夜は僕も妻さんと一緒にベッドの傍らにいた。真っ暗な部屋。
娘がいつものとおりなにやら話し始めた。
「…かあしゃん、かあしゃん…」
「かあしゃんと、とおしゃん…」
たまには自分の名前も、何度も繰り返し、家族のことを呼んでいた。
聞きながら嬉しくて可愛くて仕方無くなった。
マル、三角、四角。
娘に教えていると、まゆ、しゃんしゃく、し、か、く、って言うようになった。
中でもしゃんしゃくが気に入ったみたい。